全棟気密測定を行っていないローコスト住宅メーカーの県民共済住宅で高気密を目指して、実際にC値1.02(中間気密測定)というそこそこ高気密と言える値を出した私の家で最大限気密性能を高める為に行ったことを公開します。

高気密高断熱住宅に憧れるけど高くて手が出ないから県民共済住宅の様なローコスト住宅で最大限気密性能を高めてC値1程度、あわよくばC値1以下を狙いたいと思っている私のような施主はそれなりに多いのではないかと思います。

県民共済住宅の場合は床断熱&天井断熱なので配管周りや電気配線周りの気密処理がどうしても甘くなりがちで、気密処理する箇所が少ない基礎断熱&屋根断熱の家と比べると気密性能はどうしても落ちますが、理論上は施工中にきちんと気密処理出来れば気密は確保できるはずなので高気密の家が欲しい施主さんは出来るだけ高気密になる様にどこをどういう風に気密処理すれば良いのかを勉強して把握しておきましょう。

気密性能を改善したいなら「気密層」の理解が不可欠

家の建設中に気密性能を改善したいと思うなら気密層の概念を理解するのが不可欠です。

気密層は通常断熱材が入っている部分辺りになりますが、工法によって気密ラインの場所が若干変わります。例えば床断熱の場合は剛床が気密ラインの所もあれば、剛床の下の土台と断熱材が入っている所に気密テープで気密処理をしてそこが気密ラインになっている所もあります。

在来工法で床断熱、充填断熱、天井断熱の県民共済住宅の気密ラインは土台の上の剛床が床の気密ラインで、壁の気密ラインは外壁の内側の石膏ボードで、屋根の気密ラインは最上階の天井の石膏ボードになるのでそこが気密層となります。

気密層がどこにあるかを把握するとどこに穴を開けたら不味いのかやどの隙間を埋めるべきかが正しく判断出来るようになります。気密性能が高いと言うことは気密層の隙間が無いという事なので、気密層の内側と外側を貫通する隙間をいかにきちんと塞ぐかが大切です。

設計中に考慮したこと

レンジフードのシャッターは電動シャッター(同時給排気タイプ)を採用

タカラスタンダードのシステムキッチンのカタログより抜粋(※グランディア用のカタログではありません)
タカラスタンダードのシステムキッチンのカタログより抜粋(※グランディア用のカタログではありません)

設計時点で気密性能を高めるために出来ることは多くありませんが、盲点なのがレンジフードのシャッターです。県民共済住宅標準のタカラスタンダードのグランディアのキッチンのレンジフードは標準では普通の風圧シャッターが使われていて気密性能が高い電動シャッターではありません。

グランディアのカタログではありませんが、タカラスタンダードのシステムキッチンのカタログを見る限り、電動シャッターに変更するのにプラス7,000円で出来るみたいなので気密性能を重視するならレンジフードは電動シャッターにアップグレードしましょう。

なお、タカラスタンダードの同時給排気タイプのレンジフードだと標準で電動シャッターになります。

私はグランディアのレンジフードを県民共済住宅オプションのVRASタイプのレンジフードを採用して更に同時給排気タイプにしましたが、オプション代プラス2万円位で同時給排気タイプになり、電動シャッターが採用されるので同時給排気タイプのコスパは良いと思います。

レンジフードの気密性能が高まるとレンジフードから騒音が漏れにくくなるのと、外の音が聞こえなくなるメリットもあります。

気密性能とは関係ありませんが、私が契約した時(2021年9月)のグランディアのVRASタイプのレンジフードは低消費電力のDCモーターではなくACモーターの物だったので、もし数千円位でDCモーターに変更出来るならアップグレードしておいた方が騒音と消費電力が低減出来るので良いと思います。なお、私は見積を取っていなかったので幾らでアップグレード出来るのかやそもそも不可能なのかもわかりません。

気密性能が低い窓種はあまり使わない

私の家では気密性能が低いと言われる引違い窓や上げ下げ窓は一箇所も使わず、FIX窓、縦すべり出し窓、横すべり出し窓、テラスドアと言った気密性が高そうな窓種しか使いませんでした。

ただ、県民共済住宅で使われているYKKAPの樹脂サッシのAPW330やAPW430は昔のサッシと違って引違い窓でもそこまで気密性能が悪いわけではないと思うのでそこまで気にする必要はなく、もし窓の気密性能が気になるなら位置的に普段開けない可能性が高い窓をそもそも開かないから気密性能が高く安価でフレームも細くスタイリッシュに見えるFIX窓にする位で良いと思います。

もし窓からの隙間風が気になるならリフォームで二重窓にするという手もあります。ただ、古い家のアルミサッシなら二重窓にリフォームすると絶大な効果が得られますが、新築で使われているAPW330の様な元々高性能な樹脂サッシの窓を二重窓にしてもあまり恩恵は受けられないと思うのでコスパは悪いです。

県民共済住宅の標準窓種ではありませんが、昔流行っていたジャロジー窓(ルーバー窓)は気密性能が極めて低いので避けたほうが良いでしょう。

実は20年以上前に親が県民共済住宅で建てた私の実家にもジャロジー窓が4箇所ありますが、夏は暑いし冬は寒すぎるのでジャロジー窓だけは絶対に使わないようにしようと心に決めて家を建てました。もし私が家を新築せずに実家を相続していたら即リフォームしてジャロジー窓はFIX窓に変えるか壁にして塞ぎます。

ユニットバスは2階に設置

床断熱工法の家でユニットバスを1階に設置するとユニットバス部分は床の断熱材が入る所よりも低い位置に来るのでユニットバス周りだけは基礎断熱になる(これが断熱的には正しい施工)か、最悪ユニットバス部分は断熱材が入らずに無断熱になります。

県民共済住宅では残念ながらユニットバスの断熱はユニットバス本体の薄い断熱材頼りで基礎断熱にはなっていません。

ユニットバス周りの施工はユニットバスが入る壁と天井部分に石膏ボードが貼られるので気密性能自体は多分問題ないとは思いますが、1階にユニットバスを置くと床の断熱層と気密層を貫通してユニットバスが置かれるのできちんと気密施工されない場合、家の壁の中に冷気が直接入り込むリスクがあるのでユニットバスが入る部分の壁や天井面だったり、浴室換気扇のダクトや電気配線周りがきちんと気密施工されているかは現場で必ず確認しましょう。

ユニットバスが2階にある場合はユニットバス本体が建物の断熱層・気密層の内側に入るので県民共済住宅の場合は1階にユニットバスを設置するより2階にユニットバスを持ってきた方が確実に冬でも暖かいお風呂になります。

契約後に考慮したこと

天井断熱材が入る天井のダウンライトは断熱欠損になるリスクあり

天井断熱とダウンライトは実は相性があまり良くありません。ダウンライトは気密タイプが使われていますが、天井に穴が開くのとダウンライトの本体が天井裏に出っ張ってしまい天井裏の断熱材を敷く際にダウンライトの真上の天井断熱材がどうしても浮いてしまうので断熱欠損になりやすいと言う欠点があります。

天井の照明の施工は大工さんが断熱材を敷いた後に行われるので、いくら大工さんが丁寧に断熱材を施工してくれても電気屋さんが照明の電気配線を通したり、ダウンライトを施工した際に断熱施工を台無しにする事は良くあります。電気屋さんは電気のプロでも断熱施工の知識は全く無い人が多いので特に注意が必要です。ましてや天井裏なんて見えないので多少雑でもいいかと考える意識が低い職人さんがいても不思議ではありません。

もし天井の断熱材に隙間があっても家の引き渡し後に屋根裏に入ってDIYで断熱材をキレイに敷き直したり、グラスウール断熱材をホームセンターで購入して後から足すことは出来るので天井の断熱・気密に関してはやる気があれば後からでも何とかなります。

もし天井の断熱欠損が気になるならサーモグラフィーで晴れた日の昼間〜夕方に天井の熱画像を撮影すると一目瞭然です。

コンセントの防気カバーは標準で付く

県民共済住宅では外壁側のコンセントの防気カバーは標準で施工されます。ただ、玄関ドアの施錠スイッチの様な一部のスイッチには防気カバーが付けられないのでそういう特殊なスイッチは外壁側の壁に付けないようにしましょう。

内壁側のコンセントボックスには防気カバーが付きません。私個人としては内壁側の防気カバーは基本的には不要だと思っていますが、例外的にインターネットの光回線を引き込んだ先の光コンセントになる部分のコンセントボックスはCD管を通して外気が入ってくるので念の為防気カバーを施工して貰った方が良いと思いました。

施工中に気をつけること

土間部分の基礎と土台との間にきちんと気密パッキンがあるか

土間スペースの周囲に気密パッキンがきちんと入って隙間がないかチェック
土間スペースの周囲に気密パッキンがきちんと入って隙間がないかチェック

県民共済住宅は床断熱で基礎と土台の間は隙間がある通気パッキンで挟んで基礎は通気させますが、土間との境界部分の基礎と土台の間は隙間がない気密パッキンが入ります。

ここで注意するのが気密パッキンが入る角の部分(入隅、出隅)と気密パッキンから通気パッキンに切り替わる境界に隙間が無いかを重点的に確認して下さい。

通気パッキンは見ての通りスカスカなので素人でも判断可能
通気パッキンは見ての通りスカスカなので素人でも判断可能

もしここが施工ミスで通気パッキンが入ると土間に外気が直接入ってくる事になり、重大な気密の穴になるので施工ミスがないか現場で確認しましょう。

チェックするタイミングとしては基礎のコンクリート打設が終わり、土台敷きが終わって床の断熱材が入る前のタイミングでチェックしましょう。もし上棟後に施工ミスに気づいても後から気密パッキンを入れ直す事は出来ないので上棟前までにチェックして下さい。

ちなみに土台の木に沢山ある長方形の防蟻処理された穴は反対側まで貫通していないので気密性能に影響はありません。

写真と文章だけではいまいち理解できない場合はYouTubeで気密施工の動画を検索して見てみるのがわかりやすいと思います。

気密性能を上げるためには「気流止め」の施工が肝心

天井の気流止め
天井の気流止め

気密性能を高めるのに重要なのは施工の丁寧さです。気密テープや構造用合板、石膏ボード等できちんと隙間を塞いでいるかどうかが鍵になるので大工さんの丁寧な仕事にかかっています。

県民共済住宅は高気密住宅を売りにしている訳ではないので建てた家の気密性能が高いか低いかは運任せの要素が非常に強いです。

県民共済住宅は在来工法で床断熱(ネダレス工法)と充填断熱、天井断熱なので極々一般的な工法ですが、床断熱は基礎断熱と比べて気密が取りにくいのと、天井断熱は屋根断熱よりも気密が明らかに取りにくいので高気密を目指すとしても限界があります。

床断熱&天井断熱で気密テープを貼るべき箇所

  • 床と柱の取り合い部分
  • 床を貫通している配管周り
  • 最上階の天井と内壁との隙間(特に電気配線と配管、ダクトがある部分)
  • 外壁に穴を開けている部分(エアコンの配管穴など)
  • 気密層の外側から気密層の内側へと貫通するCD管の穴

床と柱の取り合い部分

床と柱の取り合い部分を気密テープで気流止め(県民共済住宅では標準外の施工)
床と柱の取り合い部分を気密テープで気流止め(県民共済住宅では標準外の施工)

床と柱の取り合い部分は上棟が終わって柱が組み上がって防蟻処理された後から内壁に石膏ボードが貼られる前までに床と柱の間の隙間を塞ぐように気密テープを貼ります。

県民共済住宅はネダレス工法なので床の気密は合板である程度取れています。後は気密テープで床の合板と柱の間の隙間を塞いで、床から立ち上がっている配管周りの隙間を埋められれば気密に関して問題は無いです。

床と柱の取り合い部分を気密テープで塞ぐのは県民共済住宅の標準施工では行っていないとの事なので、大工さんと監督に頼み込むか、施主自らDIYで気密テープを貼らせてもらえないか交渉が必要です。

床断熱の私の家の気密ラインは土台と断熱材の上の剛床(基礎上の土台と断熱材の上に敷く分厚い合板)の部分になるので剛床と剛床の隙間と剛床と柱の隙間、剛床と配管の隙間等を気密テープや現場発泡ウレタンで塞いでいます。

床を貫通している配管周り

床下の配管周りの気流止めも忘れずに
床下の配管周りの気流止めも忘れずに

基礎から床を貫通して上がってくる排水管、給水管は配管よりも大きいサイズのホールソーで穴を開けて配管を通すので配管と床との間に隙間が出来ます。この部分に関しては何も言わなくても水道屋さんが処理するとは思いますが、もし気密処理を忘れた場合は結構な気密の穴になる部分なのできちんと塞いでおきましょう。

ホールダウン金物周り

ホールダウン金物の貫通部分
ホールダウン金物の貫通部分

ホールダウン金物の貫通部分も見ての通り隙間があるので気密処理すべき箇所です。上の写真は上棟前ですが、上棟後に床上に剛床(構造用合板)が敷かれて柱や筋交いの横にこのホールダウン金物が来ると思うので床と柱の取り合い部分と同じ様にホールダウン金物周りの隙間にも気密テープや現場発泡ウレタン(防蟻タイプが理想)で隙間をきちんと塞ぎたいところです。

最上階の天井と内壁との隙間(特に電気配線と配管、ダクトがある部分)

天井から配線が降りてくる部分の気流止めは要注意
天井から配線が降りてくる部分の気流止めは要注意

最上階の天井と内壁との隙間は在来工法の天井断熱の場合は柱と柱の間の内壁部分は空洞になるのでそこに気流止めを施工する必要があります。

県民共済住宅の場合は基本的に袋入りグラスウールを半分に折って隙間を埋めます。筋交いが入る所は木材で気流止めを施工します。

特に注意が必要な所はグラスウールを詰めたところに電気配線がある部分と、CD管がある部分、換気システムのダクトが出ている部分は気密処理が疎かになっている可能性が高いです。

これは大工さんが手を抜いているというよりも、電気配線1本1本を完璧に気密を取るのは地味にめちゃくちゃ大変で時間がかかるのでどうしても施工の甘さが出てくる部分です。

筋交いが入る内壁の気流止め
筋交いが入る内壁の気流止め

筋交いが入る部分は木材で気流止めを行うと思いますがこの場合は木材と柱や筋交いの部分に隙間がないかや石膏ボードを装着する壁面に対してきちんと平行になっていて凹凸がなくフラットになっているかを確認しましょう。

外壁に穴を開けている部分(エアコンの配管穴やダクトなど)

ダクトの穴周りもきちんと気密テープで気流止めを行います
ダクトの穴周りもきちんと気密テープで気流止めを行います

外壁周りに関しては基本的に全て内側から石膏ボードで塞ぐので基本的に気密は取れていると思います。

注意すべきはエアコンの配管穴や換気扇のダクトを通すために壁に穴を開けた部分や電気配線を通すための配線やCD管がある箇所は石膏ボードで埋めた後から壁に穴を開けているのできちんと隙間が埋められているかチェックしましょう。

気密層の外側から気密層の内側へと貫通するCD管の穴

室内と室外を繋ぐCD管はそれ自体が気密の穴なので注意
室内と室外を繋ぐCD管はそれ自体が気密の穴なので注意

気密層の外側から気密層の内側へと貫通するCD管の穴と言われてもピンとこないかもしれませんが、例えばインターネットの光回線を引き込む場合は外壁から室内側の任意のコンセントまでCD管を通すことになりますが、CD管自体が空洞なのでそのままだとCD管を通して外気が室内側の光コンセントのあるコンセントボックスに流れ込んできます。

PoE接続の防犯カメラを付けようとCD管でLAN配線を室内から外壁に出すような場合もCD管自体が気密の穴になるので必要な配線を通した後はCD管自体の穴を気密テープで塞ぎましょう。

上の写真が良い例で外壁側のCD管から室内側のコンセントボックスから通線したLANケーブルが出ていますがLANケーブルとCD管の隙間を塞いでいないのでCD管を通して外気が室内側へと流れ込んでいきます。

CD管の穴自体は気密測定の際には一時的に塞いでしまうので気密測定時のC値の数値には出ませんが、実際に住んだ時にここが未処置だと内壁側のコンセントから隙間風が吹いたりする原因にもなるのでCD管の先端を気密テープ等で塞ぐのを忘れないようにしましょう。

県民共済住宅で気密性能を高めたいなら施主の努力や勉強が不可欠

県民共済住宅の現場監督や大工さんはプロですが、気密施工の経験や知識はほとんど持ち合わせていない職人さんもいると思うので気密性能を上げたいと言われてもどこをどうすれば気密性能が高まるのかわからない可能性があります。

そこで施主から具体的にどこをどういう風に施工してほしいのかを指示と言うかお願いする必要がありますが、そもそも施主自身がどこをどうすれば気密性能が高まるのかを知っておかないと具体的な指示が出来ません。

大工さんや電気屋さん、水道屋さん等の現場の職人さんの気密施工に満足できない場合は監督や大工さんに了解を取った上で施主が自ら気密テープで隙間を埋めて気密性能を上げるという方法もありです。

ただ安全上の理由から現場の許可が出ない可能性もあるので確実に出来るとは言えませんが、気密テープを貼らせてくれるなら施主の知識と努力次第で気密性能を高めることが出来ます。

私が参考にしたのは「令和4年度 改正建築物省エネ法 情報サイト」という建築会社向けサイトに掲載されていたマニュアルで、業界標準の断熱・気密施工のガイドラインとなる情報なのでこれを参考にして監督や大工さんに気密施工をお願いしたり、自分で気密テープを貼ったりしました。

気密測定は1回5万円程しますが行う価値あり

気密測定の様子
気密測定の様子

県民共済住宅で家を建てる場合、まず申込みをして設計士と家の間取りや設備の仕様を決めてから契約を行い、設計が終わった契約後に施工担当者となる現場監督と打ち合わせを進めて行く感じで家づくりが進んでいきます。

設計士に高気密の家にして下さいと言っても出来ることはレンジフードを電動シャッターにする位でほぼないですが、気密性能を上げたいなら現場監督との最初の打ち合わせで気密測定を行いたいとはっきり伝えて、この施主は気密性能を重視しているという印象を与えられると大工さんに指示を出す時に配慮してくれる可能性があります。

現場監督だけでなく、大工さんや電気屋や水道屋さんにも気密測定を行うので隙間はきちんと塞いでおいて下さいと伝えた方が良い結果が出る可能性が高まると思います。

県民共済住宅では気密測定をしていないので気密測定のオプションは無いのと、県民共済住宅経由で気密測定業者の手配も多分やっていないと思うので気密測定業者は施主が手配する必要があります。

気密測定を行うメリット

  • 施工が丁寧になる可能性が高い
  • 現場で対処可能な隙間があれば塞げる
  • 自宅の気密性能が判る

気密測定を行うメリットで地味に大きいと思うのが、気密測定をするなら気密測定をちゃんとやろうと現場が思ってくれる可能性があることです。

私の家では現場の大工さんや監督のおかげでこの部分に気密テープを貼って欲しいと頼んだ場所はきちんと気密施工してくれましたが、やはり気密測定をすると早い段階で監督に伝えていたのが大きいと思っています。

県民共済住宅では床と柱の取り合い部分に気密テープを貼ったりする気密施工は通常行っていないので、もしあなたの家できちんと気密施工を行ってくれたらそれが当たり前だと思わず、大工さんや監督に感謝を伝えるべきです。

気密測定は1回5万円前後でお願いできる会社が多いです。気密測定を行う際は現場の施工を止める必要があるので早めに気密測定業者と監督と相談して日程を調整しておきましょう。

気密測定の様子は過去記事の「気になる県民共済住宅のC値は?中間気密測定を行いました」で詳しく紹介していますのでそちらの記事も読んでみて下さい。

建設中に監督と大工さんに話を通して気密施工をDIYさせて貰うのもあり

大工さんに気密施工をお願い出来なかった様な場合は自分で気密施工をやらせてくれないか(気密テープを貼らせてくれないか)相談しましょう。自分で気密施工をすると言うと難しく感じますが、要は隙間に気密テープを貼るだけなので知識さえあれば誰でも出来る施工です。

ただ、その場合は大工さんの工期に影響が出ないように頻繁に現場に行ったり、怪我をしないように安全面に気をつける必要があります。もし施主が現場で怪我をした場合は現場の責任が問われるので監督や職人さんたちに迷惑をかけてしまうので安全第一で危険そうな箇所は自分で施工するのは止めて大工さんにお願いしましょう。

気密施工をする際に必要な物

私の家の建設現場で使われていた気密テープ(このテープは取り回しが良く粘着度も強すぎないので貼りやすくておすすめ)
私の家の建設現場で使われていた気密テープ(このテープは取り回しが良く粘着度も強すぎないので貼りやすくておすすめ)

気密施工をする上で必要になるのが気密テープです。高気密住宅は気密テープがふんだんに使われていて隙間という隙間に気密テープが貼られています。

気密テープは普通のガムテープや養生テープみたいな見た目のテープで粘着力や耐候性が高いテープです。この気密テープを家の隙間に貼れば隙間が物理的に塞がるので家の気密性能が高まります。

コーキングでも気密処理は出来ますが、コーキングの場合は数年で劣化して切れてしまう可能性があるので可能なら気密テープや現場発泡ウレタンで気密処理を行う方が望ましいです。

気密テープは大工さんに許可を取って現場にあるものを使わせて貰うか、自腹で購入して用意しましょう。気密テープ自体は1本数百円〜千円前後で買えるので価格よりも品質重視で選ぶことをオススメします。

上の気密テープは私の家の建設現場で大工さんが使っていた気密テープでこのテープは粘着度が強すぎず弱すぎずで取り回しが良くとても使いやすくてプロが選ぶのも納得でした。

現場発泡ウレタンは自分で購入せずに現場にある物を使わせて貰う方が良いと思います。私は事前に現場発泡ウレタンを購入しておいたのですが結局一度も使いませんでした。

家の引き渡し後にDIYで処置すべき箇所

  • 各階の天井点検口の隙間
  • 屋根裏への天井点検口周りの断熱、気密
  • インターネットの光回線引込み先のCD管の室内側の先端
  • 屋内と屋外を繋ぐCD管の先端(インターネットの光回線引込み先やPoE接続の防犯カメラの設置先など)

各階の天井点検口の隙間

県民共済住宅の天井点検口は高気密タイプではないので隙間があります
県民共済住宅の天井点検口は高気密タイプではないので隙間があります
隙間部分に白いマスキングテープを貼って隙間を塞ぎました
隙間部分に白いマスキングテープを貼って隙間を塞ぎました

家の引き渡し後にDIYで気密処理が出来る箇所もあります。特に天井点検口は出入り口の隙間に手をかざすと風を感じる位スカスカなので隙間を白いマスキングテープで塞ぐとかんたんかつキレイに処置できて剥がしやすいです。

県民共済住宅の天井点検口は普通の天井点検口で高気密タイプではありません。天井点検口の構造的に隙間があるような状態なので県民共済住宅の家で標準的に使われている天井点検口は気密の穴と言って良いです。

天井点検口の隙間は気密測定を行う時は一時的に養生テープで塞いでから計測するのでC値には反映されません。地味に忘れがちですが見ての通り隙間がある箇所です。

例外的に2021年頃までオプションに存在していた吹付け断熱の家は気密ラインが天井ではなく屋根になるので天井点検口に隙間があっても問題無くなります。

天井点検口にマスキングテープをキレイに貼るコツはテープを手で千切らずにきちんとハサミで切ることです。隙間にマステを貼るだけの誰でも出来るかんたんな作業ですが効果は大きいので是非やってみて下さい。

どうしても気になる箇所があればサーモグラフィーでチェック

壁上の気流止めがうまく出来ていなかった箇所をサーモカメラで撮影
壁上の気流止めがうまく出来ていなかった箇所をサーモカメラで撮影

もし引き渡し後に実際に住んでみてこの部屋だけやたら暑いor寒いみたいな事があるけど原因がさっぱりわからない場合は夏や冬の様な室内と室外との寒暖差が激しい時期にサーモグラフィーを使えば一目瞭然です。

サーモグラフィーは熱を測定する為の機器ですが、気密の穴があればそこから熱も移動するのでどこに原因があるか探す上では有用です。

天井の断熱欠損部分をサーモグラフィーで撮影
天井の断熱欠損部分をサーモグラフィーで撮影
天井断熱のこの位の隙間でもサーモグラフィーで見ると結構な断熱欠損に見えます
天井断熱のこの位の隙間でもサーモグラフィーで見ると結構な断熱欠損に見えます

サーモグラフィーがあると断熱欠損も判るので断熱・気密を重視する施主さんなら購入しておくのも悪くないと思いますが、サーモグラフィーは決して安いものではなく、1台3万円以上するので万人には勧めません。

家の建設中にサーモグラフィーが使えるのは天井断熱が施工されて建物全体が断熱材で覆われて建物内と外で温度差が出る様になった時からです。

建物全体が断熱材で覆われる前の工程では建物の内外で温度差が無いのでサーモグラフィーで断熱欠損や気密の取れていない箇所があっても温度差を見るサーモグラフィーでは多分わからないと思います。

季節が春や秋の場合は建物内外の温度差が小さいのでサーモグラフィーでの差が出にくいと思いますが、夏の晴天時は天井断熱の断熱欠損箇所がわかりやすいのでサーモグラフィーがあると役立つ可能性があります。

サーモグラフィーがあれば現場監督や職人さんに熱画像を見せることで原因となる箇所が一目瞭然で断熱施工や気密施工の修正をお願いする根拠になるので断熱や気密性能を上げたいなら買っておくのも一考です。

私が使っているサーモグラフィーはAndroidスマホのUSB Type-Cに挿して専用アプリをインストールして使うHIKMICROという中国メーカーの物を購入しました。

プロの会社はFLIRの5万円位の中級モデルを購入して使うことが多いですが、施主がサーモグラフィーを使う機会なんて多くないので安いエントリーモデルで十分だと思います。

解像度の違いで数万円の価格差がありますが、解像度が低くても大体この辺に断熱欠損があるというのが分かれば良いので施主がサーモグラフィーを買うなら安いモデルでも問題ありません。

冬の寒い時期もサーモグラフィーで断熱欠損がわかりやすい
冬の寒い時期もサーモグラフィーで断熱欠損がわかりやすい

私のブログでもサーモグラフィーを活用した記事がいくつかあるので実際にサーモグラフィーを購入するかどうかの参考になればと思います。

最後に

県民共済住宅で気密性能を高めるために何かオプションを入れて気密性能を上げるのは難しいので施主が出来ることは頻繁に現場を訪れて施工ミスがないかチェックしたり、気密測定を行ったり、監督や大工さんの許可を得た上で施主自ら気密テープで隙間を埋める位しか出来ません。

家の建設は工程が進むと前の工程に後戻り出来ないので気密性能が気になるなら必ず定期的(毎週1〜2回)は現場に行って施工忘れや施工ミスが無いか施主自ら段階段階できちんと確認するのが大切です。

もし現場で疑問点や怪しい施工箇所があればすぐにその場にいる大工さんに質問したり、現場監督に連絡を入れて速やかに確認する様にして下さい。もし連絡を入れるのが遅くなってしまうと後の工程に進んでしまっていて後戻り出来ないという事になりかねないので定期的に現場をチェックするのは大切です。

気密性能をチェックする上で大切なのが「気密層」がどこにあるかをきちんと理解した上で現場に行く事です。埋めるべき隙間とそうでない隙間を判別出来ないと気密性能を高めるのは難しいと思うので最低限自分の家の気密ラインがどこにあるかは絶対に把握しておきましょう。

将来的に県民共済住宅が気密施工の重要性に気づいて「高気密仕様」みたいな気密施工と気密測定がセットになったオプションが設定されるか、坪単価が上がっても標準で全棟気密測定になるのが理想ですが、残念ながら2022年時点ではそういう情報はありません。

国の方針として2050年までにカーボンニュートラルを目指す上でも冷暖房エネルギーを削減できる高気密高断熱住宅は近い将来当たり前に普及すると思うので県民共済住宅には時代を先取りして金額面だけでなく性能面でも魅力的な家づくりをして欲しいと思います。

【追記】ブログ読者さんから県民共済住宅でC値0.78が出たとの嬉しい報告がありました

以前問い合わせフォームで気密施工について問い合わせ頂いたブログ読者の方が県民共済住宅で契約し、中間気密測定でC値0.78という数値が出たとの報告を先日頂きました。

実際に県民共済住宅でC値1以下に出来たという実例が出たのは県民共済住宅で高気密を目指したい施主にとっては希望になると思います。

残念ながら2022年現在の県民共済住宅では気密施工のガイドラインが無く、あなたの家が高気密住宅になるかどうかは監督、職人ガチャ的要素が強すぎるので誰でもC値1以下に出来るとは決して言えませんが、監督、職人運と施主の勉強と努力次第で何とか出来る要素もあるので最大限気密性能を高められるように頑張ってみてください。