2021年に県民共済住宅で契約し、2022年4月に家の引き渡しを受けてから1年が経過し、2度目の夏がやってきました。
私の注文住宅での家づくりは出来るだけお金をかけずに快適で維持費も安い家を作る事、つまり全館冷暖房が無理なく出来る高気密高断熱住宅をローコストで目指すという方向性でYouTube等で自分なりに色々勉強して最新の高気密高断熱住宅のセオリーを注文住宅の間取りや仕様に落とし込みました。
新居がある現在のさいたま市の気候で夏を快適に過ごすにはエアコンの利用が必須なので、エアコンを用いてどれだけ快適かつ電気代を抑えられるかという観点から逆算して出した答えが「高気密高断熱」+「パッシブデザイン」+「全館冷房」+「太陽光発電」でした。
この結論に至った考え方としては、絶対的な快適性を得るためには居室だけでなく家中24時間冷房し続けるのが必須で、24時間エアコンをつけっぱなしにするなら電気代削減の為にも太陽光発電は必須、その上で住宅の断熱性能・気密性能を高めて冷暖房負荷を減らし、パッシブデザインで窓から日射熱を極力入れない設計にすることでエアコンの必要冷房能力も最低限に抑えてエアコン本体の価格も抑えつつ、効率が良い小さい畳数のエアコン1〜2台で家中冷やして電気代そこそこで快適な環境を得られるかなという感じでエアコンファーストな家を作りました。
理論上は快適な家になると思っていましたが、実際に住んでみると家中涼しくてカラっとしていて家の中が本当に快適な空間になったのはある意味予想通りでしたが、全館冷房によって得られた快適さのレベルは予想以上で家の中にいる分には涼しさも暑さも蒸し暑さも感じないというレベチの快適さに驚きました。
家のスペック
- 県民共済住宅(2021年9月契約)の注文住宅
- 地域区分は6地域でUA値0.41(断熱等級6、HEAT20 G2)
- C値は1.02(中間気密測定)
- 延坪35.7坪(延床面積118.2m2)の総二階で二階リビング
- 換気はダクト式第3種換気システム
- エアコンは2階に8畳用1台、1階に寒冷地仕様の6畳用1台の2台のみ
- 太陽光発電は5.1kW
- 窓サッシは全方角ともAPW330の遮熱Low-Eペアガラス(アルミスペーサー)
- 断熱工法は床断熱、壁は充填断熱、天井断熱
- 建物価格は税抜1,800万円台で坪単価は49万円台
私の家のスペックはこんな感じでコスパだけはぶっ壊れですが、建物の断熱性能や気密性能としては2020年代の高気密高断熱住宅というカテゴリ内では並程度で特別優れている訳ではありません。
エアコンの運転方法は一条工務店の施主ブロガーさんのふえっぴーさんが提唱しているF式全館冷房(設定温度23℃前後、風量最弱、風向き下)をベースに私の家の環境に合うように設定温度を24℃もしくは25℃と風量弱(5段階中2つ目)もしくは中(5段階中3つ目)で風向きはやや上で冷気を送るのにサーキュレーターを用いるという風に多少アレンジして24時間エアコンをつけっぱなしで運用しています。
エアコンも普通の市販の壁掛けエアコンを普通の高さに設置していて、床下エアコンや小屋裏エアコンみたいな裏技的テクニックも使っていない普通のエアコンを普通に全館冷房的に使っています。
設置しているエアコンは過去記事の「新居にエアコンを設置しました」をご覧ください。
換気システムは県民共済住宅の2021年契約当時の標準仕様だったダクト式第3種換気システムで、第3種換気なので熱交換はありません。
家の仕様はこんな感じで至って普通なので、普通の住宅を施主の知識で全館冷房の高気密高断熱住宅に寄せてみたという感じです。
気温データと2階リビングのSwitchBot温湿度計のデータ
私が住んでいるさいたま市で38.7℃を記録した2023年7月10日〜16日の室温データを見てみます。
この週は最高気温38℃以上の日が7日中3日もありかなりヤバイ暑さでしたが、私の家の室温は最高気温38.5℃を記録した12日に一時的に27℃以上になりましたが、それ以降は26℃台で推移しています。
相対湿度は平均54%と第3種換気にも関わらず快適な状態を維持できていて、絶対湿度も平均13g/m3とかなり良い感じです。
湿度が一時的に60%を超えているのは洗濯物を室内干ししている時間と風呂上がりにユニットバスのドアを全開にして、浴室換気扇を使わずにサーキュレーターで室内の空気を送り込んでエアコンで除湿して乾かすような使い方をしているので瞬間的に相対湿度が高くなる時間帯があります。
室温と湿度をモニタリングするならSwitchBot温湿度計とミニハブがおすすめ
室温、相対湿度、絶対湿度の計測に使っているのはSwitchBot温湿度計で、以前は室温と相対湿度しか見れなかった気がしましたがアプリのアップデートが度々あり、いつの間にか絶対湿度も見れるようになっていました。
SwitchBot温湿度計単体だとスマホとBluetooth接続しか出来ずに過去データの取り込みが遅くてデータの保存期間も短いですが、SwitchBotハブミニと組み合わせる事でハブミニと同じWi-Fiに接続していれば一瞬で過去データの読み込みが出来てデータの保存期間も長いのでSwitchBot温湿度計単体ではなくハブミニもセットで導入した方が便利です。
SwitchBot温湿度計の設置場所は2階LDKの磁石がくっつくエマウォールの壁の上方(床から2m位)でエアコンの風が直接当たらない位置に設置してあります。
最高気温38.7℃の2023年7月16日の気温と消費電力
この日は暑かったのでエアコンの冷房負荷が高く、2階の8畳用エアコンと1階の6畳用エアコンの2台で冷房していた事もあり昼間の消費電力が1時間あたり1kWhを超えている時間が多かったです。
深夜帯の消費電力が高い時はエコキュートの炊き上げで昼の12時頃は海外製食洗機、昼の12時頃と19時頃はIHクッキングヒーターが動いていたと思います。
この日は33.8kWhも電力を使いましたが、太陽光発電があると晴れた日の暑い時間帯でも0円でエアコンが使えるのであまり節電節電しなくてもそんなに罪悪感がありません。
高気密高断熱住宅に住むと気温よりも湿度が気になるようになります
参考までに気象庁のWEBサイトから梅雨時期の気温データと自宅のSwitchBot温湿度計の室温、湿度データを比較してみます。
平均湿度が80%以上ある1年の中でもかなり条件が悪い週のデータで比較してみると相対湿度の平均が57%でMAX70%まで行った時がありましたが絶対湿度も平均13g/m3台で15日(木曜日)の室温が下がりすぎているのは失敗点ですが、エアコンの冷房や再熱除湿を使って湿度コントロールが一番難しい梅雨時期でも概ね快適に過ごせたと思います。
既に高気密高断熱住宅を建てて住んでいる施主ブロガーさんの記事を見ると、夏はエアコンで気温を下げるというよりも湿度をどうやって下げるかの記事が多く、正直私も古い家に住んでいた時は湿度なんて特に意識せずにいかに気温を下げるかみたいな事ばかり考えていて何で湿度なんだろう?と疑問に思っていましたが、実際に高気密高断熱住宅に住んでみると気温はあっさり簡単に下がりますが、湿度はエアコンを上手に使いこなさないと下げられないのでなるほどそういう事かと理解しました。
これは実際に高気密高断熱住宅に住んでみないと中々想像できないと思いますが、高気密高断熱住宅で夏の冷房計画をしっかり行うなら温度をどうするかよりも湿度をどうやってコントロールするのかが重要になります。
エアコンの設定温度を高めにすれば省エネになりますが、設定温度に室温が近づいてコンプレッサーの動作が止まり、サーモオフと呼ばれる消費電力が少ない送風状態になるとエアコンで除湿されなくなり、湿度が急速に高まる「湿度戻り」という状態になり、部屋がいきなりジメッとして不快感が出てしまいます。
各個室にエアコンがあると冷やす範囲が狭く、冷房負荷も少ないのでサーモオフしやすくなり、気温は下がっても湿度はあまり下がらない状態になるので湿度の事を考えると居室だけ冷房するのではなく家中全館冷房するのが最適解だと思います。
湿度戻りを防ぐためにはエアコンをサーモオフさせずに動かし続けるのが重要ですが、室温が簡単に下がる高気密高断熱住宅だとそれが結構難しいです。
エアコンの設定温度を下げて風量を絞るとサーモオフしなくなりますが、今度は部屋が寒くなりすぎてしまうという問題が出てくるのでサーモオフを起こさずに室温を適温に保つためには小さい畳数のエアコンで広い範囲を冷やす事でエアコン1台にサーモオフしない程度の冷房負荷を与えつつ、部屋が寒すぎない状態をキープする事がしやすくなります。
小さい畳数のエアコンだと猛暑日なんかは冷房能力が足りなくなってしまう可能性があるので、可能なら1台だけで家中冷房しようとせずに小さい畳数のエアコンを予備としてもう1〜2台設置して、そんなに暑くない日はエアコン1台で冷房して1台だけだと温度ムラが出るような暑い日のみ複数台を動かすようにすると快適性が高まります。
エアコンをサーモオフさせたくないならエアコンの消費電力をモニター出来るワットチェッカーは必需品
エアコンをサーモオフさせないためには常にエアコンの消費電力量を見ないといけないのでワットチェッカーが必須です。
6畳用エアコンや8畳用エアコンだとワットチェッカーのコンセントに差し込めますが、10畳用以上だとコンセントの形状が異なり安いワットチェッカーが使えずに消費電力を測れないのでそういう意味でも6畳用エアコンや8畳用エアコンはおすすめです。
ワットチェッカーで数Wh〜30Wh位だとコンプレッサーが止まっていて送風運転になっているサーモオフ状態なので、エアコンの機種にもよりますが常に80Wh以上でコンプレッサーが動いている状態になるようにエアコンの設定温度と風量を調整しましょう。
HEMSを導入すればワットチェッカー無しでも詳細な消費電力を計測できると思いますが、HEMS対応の分電盤はHEMS非対応の分電盤よりも数万円は高いと思うので可能なら2千円台で買えるワットチェッカーで済ませた方が安いです。
部屋のドアを閉めると暑くなるのが失敗点
ダクトやアローファンを用いない全館冷房だと居室のドアを閉めた時に冷気が部屋の中に入らないので、部屋のドア上にエアパスファンを設置すれば冷気が入るだろうと思ってエアパスファンを設置しましたが、これは正直失敗でした。
というのも、2畳サイズの小さい個室でも小さいエアパスファンだけでは空気の入れ替えが出来ませんでした。
原因はエアパスファンの能力不足というよりも、県民共済住宅の標準仕様で選んだウッドワンの引き戸の気密性能が思っていたよりも高くてドア下のドアとレールの隙間が小さく、アンダーカットの部分から室内の空気が排気されずに部屋の空気が入れ替わらなかったのでエアパスファンから冷気があまり吸気されないので冷えませんでした。
引き戸ではなく開き戸の部屋はドアのアンダーカットから排気されていたので、エアパスファンを付けるなら開き戸や吊り戸のようなドア下に隙間があるタイプの室内ドアを選んだほうが良いと思います。
それと、吸気用のエアパスファンだけでなく排気用のエアパスファンも用意するか、あるいはドア上の垂れ壁を設けずに穴を開ける感じで開放するような設計にしたり、室内窓を設けても良かったです。
最後に
新居に住み始めて2年目の夏になりますが、昨年の夏に試行錯誤して湿度コントロールのノウハウをある程度確立したので今年は去年よりも快適な状態で過ごすことが出来ています。
私の家は2階リビングで吹き抜けなしのリビング階段という事もあり、高気密高断熱住宅界隈で流行りの小屋裏エアコンや床下エアコンではなく普通の高さにエアコンを設置して2階エアコンでの全館冷房、極端に暑い日は1階エアコンも併用してのワンフロア1台運用が上手くハマったと思います。
全館冷房はエアコンで冷やす面積が大きくなる分冷房負荷が上がり電気代がかかるデメリットがありますが、快適性が本当に別次元なので高気密高断熱住宅に興味がある人は高気密高断熱住宅とパッシブデザインや冷暖房計画について勉強して電気代節約のために太陽光発電の導入をセットで考えた上で是非やってみてください。
各部屋にエアコンがあると部屋のドアを閉めていても冷える上、部屋毎の温度管理が細かく出来るメリットがありますが、エアコンの台数が多いと湿度がそれほど下がらないというデメリットもあります。
夏の全館冷房が成功すると家の湿度が50%台まで下がり家中どこにいても蒸し暑さを感じず快適で、無垢床ではない普通の突板フローリングでも足触りがサラッとして気持ちよくなるし、室内干しの洗濯物も乾きやすくなるし、カビやダニが発生しづらくなるのでメリットがとても大きい割に夏は冬ほど室温と外気温の温度差が無いので電気代が高くなると言っても冬の時期よりは安いので快適性のコスパは高いと思います。