設計士さんとの打ち合わせが進むとそのうち窓をどうするかを決めることになります。県民共済住宅の窓はYKKAPの樹脂サッシのAPW330かLIXILのアルミ樹脂複合サッシのサーモスII Hから選べますが、どっちの窓が良いのかを判断する上で窓の性能について理解した方が納得行く窓選びになると思います。
【追記】県民共済住宅のLIXILの標準サッシがサーモスXからサーモスII Hにダウングレードされていました。サーモスXで考えていた方は担当の設計士さんにサーモスXなのかサーモスII Hなのか確認してみて下さい。準防火地域の方はYKKAPのサッシが選べないという情報があるのでYKKAPのサッシが使えるかどうかを担当の設計士さんに確認してみてください。
窓は家全体の断熱性能や気密性能を考えると窓は弱点になる箇所でもありますが、冬の窓からの日射取得は光熱費ゼロの貴重な熱源にもなります。夏は窓の外で日射遮蔽が上手く出来ればその分冷暖房費が安くなって涼しい家に出来るので窓次第で家の温熱環境や冷暖房費が大きく変わってくる極めて重要な部分です。
そして窓は何より外観のデザインを決める上で重要なポイントでもあります。
県民共済住宅で選べる窓の種類については結構他の施主ブロガーさんも記事にしているので私のブログでは主に窓の性能面やデザイン的な配置について詳しく書いてみました。
県民共済住宅で選べる窓の種類
県民共済住宅ではYKKAPのAPW330シリーズかLIXILのサーモスXシリーズの引違い窓、片上げ下げ窓、縦滑り出し窓、横滑り出し窓、FIX窓が採用できます。
県民共済住宅の標準やオプションで選べる窓のサイズはAPW330やサーモスXのカタログにあるラインナップと比べて限定されていますが、カタログ上に存在してもこの一覧に無いサイズの窓は個別見積りやオプション扱いで入れられると思います。
横滑り出し窓と縦滑り出し窓はサイズによってはAPW330よりも性能が落ちるアルミ樹脂複合サッシになってしまうので性能を重視するならわざわざオプション代金を支払ってこれらの窓を選ばないことが大切です。
その他に飾り窓系の小窓もオプションで入れる事も出来ます。ただ、小窓は普通の窓よりも断熱性能が低いので導入する際はそれを理解した上で入れると良いと思います。
窓にも性能差があります
まず大前提として窓にも家電や車のように性能差というものがあります。窓の性能を表す値として使われているのが熱貫流率(U値)です。この熱貫流率は数値が小さければ小さいほど熱を通しにくく断熱性能が高くなります。
そしてもう一つは日射熱取得率(η値)と呼ばれる窓からどれだけ太陽の熱を取り込めるかという割合の数値です。この数値が大きければ日射取得が優れていて、この数値が小さければ日射遮蔽が優れているという風に単純に数値の大小で良し悪しが決められない難しさがあります。
窓を選ぶ際にはこの2つの性能をある程度理解した上で選ぶと窓の性能面での失敗が無くなるのではと思います。
窓の熱貫流率(U値)
断熱性能が高いオール樹脂サッシでLow-Eトリプルガラスの窓はこの熱貫流率の値が0.9位になります。オール樹脂サッシのLow-Eペアガラスだと1.3位、一般的なアルミ樹脂複合サッシのLow-Eペアガラスだと2.3位で昔よく使われていたアルミサッシのペアガラスだと4.6位が標準です。
この数値だけ見てもピンとこないと思いますが、参考までに県民共済住宅で標準仕様の断熱材が入った壁の熱貫流率(U値)は0.46〜0.48位で高断熱仕様のオプションにすると0.38位になります。この数値を基準として窓のU値を見ればオール樹脂のトリプルガラスで壁の約半分の断熱性能、オール樹脂のペアガラスで壁の3分の1位の断熱性能、アルミ樹脂複合サッシで壁の4分の1か5分の1位の断熱性能でアルミサッシだと実に壁の10分の1位の断熱性能になることがわかります。
この様に窓はどんなに高性能な窓を使ったとしても建物全体の断熱の弱点になる箇所なので出来る限り高性能な窓を選びつつ、必要以上に窓の数を増やさない事が建物の断熱性能を考えると重要です。
県民共済住宅標準のAPW330のLow-Eペアガラスのアルゴンガス入りのアルミスペーサー仕様の縦滑り出し窓だとU値が1.37でサーモスXのLow-Eペアガラスのアルゴンガス入りの縦滑り出し窓だとU値が1.52なので窓の断熱性能はAPW330の方が高性能です。
APW330のU値1.37とサーモスXのU値1.52の差分のU値0.15がどれだけ変わるのかもピンとこないと思いますが、県民共済住宅の標準仕様の断熱材を使った壁のU値が0.46〜0.48位でこれを高断熱仕様の断熱材に変えてもU値が0.38位と僅か0.08〜0.10位しか変わらない事を考えるとAPW330とサーモスXの差分の0.15という数値は結構大きいことがわかると思います。
防火窓に関してはU値が普通の窓よりも1〜2割位悪化しているので詳しくはAPW330の防火窓のカタログを見てください。参考までにAPW330の防火窓の縦すべり出し窓のアルミスペーサーのU値は1.55で普通のAPW330の縦すべり出し窓のアルミスペーサーのU値1.37よりも悪化しています。
【追記】準防火地域や防火地域に県民共済住宅で家を建てる場合、YKKAPの樹脂サッシが選べないという情報があります。詳しくは担当の設計士さんに確認してみてください。
サッシ部分の素材
サッシ部分の素材は大まかに樹脂とアルミの2種類があります。アルミと樹脂では樹脂の方が圧倒的に熱を通しません。
これはアルミのスプーンを熱い飲み物が入ったティーカップに入れると熱が持ち手まで伝わって熱くなりますが、樹脂(プラ素材)のスプーンを同じティーカップに入れても持ち手は熱くならないですよね。
逆に冷たいアイスクリームにアルミのスプーンを刺したまま置いておくとアイスの冷たい熱が伝わって持ち手まで冷たくなるし、プラスチックのスプーンを同じ様に冷たいアイスクリームに刺しておいても持ち手は冷たくなりませんよね。
それと同じことが窓枠(サッシ)でも起こっているので断熱性能を考えるとアルミ樹脂複合サッシではなく樹脂サッシをおすすめする理由です。そしてサッシの素材の違いで結露のしやすさが変わってきます。
冬の窓の結露について
アルミサッシの家だと冬に窓や窓枠が結露でビショビショになっている家も多いかと思います。私が今住んでいる家もアルミサッシのペアガラスで内窓を入れて二重窓にリフォームしていますが冬は北面のアルミサッシの窓の窓枠の下の部分が結露しています。
結露の原因は室内の水蒸気を含んだ空気が外気で冷やされた窓の表面に触れて空気と窓との温度差で結露が発生します。なので結露を抑えようとするなら窓が冷たくならないようにすれば良いので断熱性能の良い窓を使うことで窓が冷たくなりにくくなり結露するリスクを下げることが出来ます。
U値の小さい窓を使えば結露しにくくなりますが、窓のU値はガラス部分と窓枠部分の割合に応じた平均値なので窓ガラスの断熱性能が高くてもサッシ部分の断熱性能が低ければサッシ部分が結露するリスクが高まるので結露リスクを考えるとアルミ樹脂複合サッシのサーモスXよりはオール樹脂のAPW330を選ぶ方が無難です。
【追記】県民共済住宅のLIXILの標準サッシがサーモスXよりも更に断熱性能が低いサーモスII Hにダウングレードされています。窓の断熱性能が低下すると冬の結露リスクや窓から冷気が降りてくるコールドドラフトが発生しやすくなり、足元が冷える原因になるので余程の理由がない限りYKKAPのAPW330を選ぶことをオススメします。
窓のアルミスペーサーを樹脂スペーサー変更すると結露対策に有効
また、同じオール樹脂サッシでも窓ガラスの間に入るスペーサーという部品が樹脂スペーサーよりもアルミスペーサーの方が結露リスクは高くなります。APW330の樹脂スペーサーだとU値が1.31でアルミスペーサーの1.37よりも断熱性能が向上します。樹脂スペーサーにする数値的なインパクトは小さいですが、このスペーサーが樹脂かアルミかで結露する温度が2〜3度変わるとも言われています。県民共済住宅の標準仕様のAPW330ではスペーサーは残念ながらアルミスペーサーです。
県民共済住宅では樹脂スペーサーに有料で変更出来るので結露が心配なら樹脂スペーサーに変更しておいたほうが良いかもしれません。予算的に全ての窓のスペーサーを変えられないなら結露しやすい北側の窓のスペーサーだけでも変えておくと良いかもしれません。
【追記】樹脂スペーサーへの変更は県民共済住宅の社内ルールの「性能に関する部分の変更が出来ない」に該当してNGが出たので現状スペーサーの変更は出来ません。
結露に関しては部屋の温度や湿度(高ければ高いほど結露しやすい)や外気温(低ければ低いほど結露しやすい)に左右されるのでAPW330の樹脂スペーサーにした所で完全に防げるものではありません。結露しにくい窓を入れることで普通の窓なら結露する所で結露しなかったり、普通の窓だと結露でびちゃびちゃになる所が結露しにくい窓だと水滴がちょっとしか出なかったりとそういう違いは出てきます。
窓の種類で断熱性能や気密性能に違いがあります
同じAPW330シリーズの窓でも引違い窓や上げ下げ窓、滑り出し窓やFIX窓といった窓の種類で性能差が出てきます。断熱性能が高いのは縦滑り出し窓、横滑り出し窓といった滑り出し窓系とFIX窓です。
FIX窓(はめ殺し窓)は開閉機構が不要な分隙間が少ないので気密性も高ければ断熱性能も高くなります。県民共済住宅の標準仕様(アルミスペーサー、アルゴンガス入り)のAPW330のカタログ値では熱貫流率(U値)が1.37となります。
滑り出し窓系は窓の仕組み的に窓を閉める時に窓枠と窓が四方ともゴムパッキンできっちり密着して収まるので気密性も高ければ断熱性能も高くなっています。県民共済住宅の標準仕様(アルミスペーサー、アルゴンガス入り)のAPW330のカタログ値ではU値が1.37とFIX窓と同じになります。
FIX窓や滑り出し窓を複数組み合わせるジョイント窓は窓と窓との接続部分にアルミ素材を使う影響でU値が悪化します。APW330のジョイント窓のカタログ値ではアルミスペーサーでU値が1.65と結構悪化します。なおAPW330のカタログで設定のあるFIX窓とすべり出し窓やツーアクション窓を組み合わせる段窓と連窓は性能悪化が無いようでした。
引違い窓や上げ下げ窓の引違い窓系の窓は構造上隙間ができやすいので気密性能、断熱性能共に滑り出し窓よりも低下します。県民共済住宅の標準仕様(アルミスペーサー、アルゴンガス入り)のAPW330のカタログ値では引違い窓がU値が1.42で上げ下げ窓が1.43で引違い窓のテラスタイプは1.59となり、FIX窓や滑り出し窓系よりもU値が悪くなっています。
窓の断熱性能だけを考えるなら引違い窓系の窓は極力使わずにFIX窓や滑り出し窓を多用した方が良いでしょう。ジョイント窓も見た目はとても良いですが性能が結構悪くなるので性能重視なら避けたほうが無難です。
見た目のデザインや開けやすさ、県民共済住宅の標準で使える窓のサイズを考えると引違い窓系を一切使わないのは難しいと思うので、殆ど開ける予定が無い小さめの明り取り用の窓は引違い窓系ではなく滑り出し窓系やFIX窓にした方が良いと思います。
この辺りの数値に興味がある方はAPW330の一般向けカタログやAPW330の業務用カタログの最後の方のページに開口部の熱貫流率の数値が載っているので一度目を通してみると良いです。
窓ガラスの種類について
窓ガラスには遮熱タイプと断熱タイプの2種類があります。県民共済住宅では非防火地域に家を建てるなら遮熱タイプのガラスになり、防火地域なら断熱タイプのガラスになります。
遮熱タイプと断熱タイプで何がどう違うのかと言うと、遮熱タイプは日射遮蔽重視で断熱タイプは日射取得重視という違いがありますが、遮熱タイプと断熱タイプで窓ガラス自体の断熱性能(熱貫流率)に違いはありません。
日射熱取得率(η値)
窓ガラスから日射をどれだけ取り込むかの割合は日射熱取得率(η値)で表されます。日射熱取得率の数値が大きければ窓からの日射を多く取り込め、逆に日射熱取得率の数値が小さければ窓からの日射を取り込まないということです。なおηはイータと読みます。
日射熱取得率はAPW330やサーモスX等の窓のカタログの最後の方に載っている数値で、遮熱Low-Eのペアガラスのブルーで0.40、断熱Low-Eのペアガラスのニュートラル色で0.60〜0.62となります。
日射熱取得率の数値が大きい方が良いのか小さい方が良いのかは熱貫流率と違って一概にはどちらがより優れているとは判断出来ません。例えば夏の暑い時期なら窓から入ってくる日射熱は少ない方が良いので遮熱タイプが良いですが、冬の場合は逆に窓から多くの日射熱を取り込みたいので断熱タイプが良いとなります。
遮熱タイプの過信は禁物
遮熱タイプの窓ガラスを使えば夏は涼しいのかと言われると実はそういうわけでもありません。勿論、断熱タイプの窓ガラスよりは日射取得量が減るのでその分涼しくなりますが、遮熱タイプの窓ガラスを入れておけばカーテンやブラインドやすだれ等で日射遮蔽する必要がないのかというと厳しいものがあります。
遮熱タイプの日射熱取得率は0.40で遮熱タイプの窓ガラスでも40%分の日射熱は窓から室内に入ってくるという事です。
日射熱が具体的にどの位あるのかを調べてみた所、日本経済新聞の記事で窓1平方メートルにつき夏至で東西面が600W、南面が200Wの日射熱があり、冬至で南面が570W、東西面が250Wの日射熱があるとの事でした。遮熱タイプの窓ガラスで4割の熱を取り込むため、夏至の600Wの時は1平方メートル辺り240Wもの熱を取り込んでしまう計算(600W×0.40)です。特に東西面の窓はきっちり日射遮蔽を行う必要があります。
県民共済住宅の標準仕様の引違い窓で一番大きな16013サイズの腰窓だと幅が1,640mm、高さが1,370mmで2.2468平方メートルの面積があります。この窓を東か西側に設置したら2.2468(窓の面積)×600(日射熱)×0.4(遮熱タイプの日射熱取得率)=539.232Wで夏至の時は1時間あたり539W程の熱量がこの窓から入ってくる計算になります。この計算ではガラス面の大きさではなく窓枠を含めた大きさで計算しているので実際はもう少し入ってくる熱量が少なくなります。
500Wと言えば電気ストーブ1台分位の熱量があるのでそんな熱を何もせずに室内に取り込んでいたら暑くてたまりません。そして窓全体で500Wではなく窓1つにつき500Wなので全体で見るとかなりの熱量になるはずです。カーテンやブラインドなどで室内側で日射遮蔽をすれば多少はマシになりますが、日射熱自体は窓の内側に入ってくるので窓の外側でアウターシェードやすだれ等で日射遮蔽をする場合と比べると日射遮蔽の効果は落ちます。
東西面の窓を遮熱タイプにすると夏至は1平方メートル辺り240W(600W×0.4)もの熱が入ってきて、冬至は逆に1平方メートル辺り100W(250W×0.4)しか日射熱を取り込めません。日射熱の事を考えると東西の窓は出来るだけ小さくするか窓の外でしっかりと日射遮蔽を行う必要がありますね。
東西面の腰窓1つで500W以上の熱が入ってくる事を考えると東西面に大きな窓を設ける場合は日射遮蔽をどうするかをちゃんと考えておかないと夏場が大変な事になりそうです。東西面に隣家があって直射日光がそこまで当たらない土地なら良いですが、東西側が開けている土地の窓は要注意です。
南面の窓が遮熱タイプなら夏至は1平方メートル辺り80W(200W×0.4)で、冬至は1平方メートル辺り228W(570W×0.4)の熱を取り込めます。もしこれが断熱タイプのガラスなら夏至で1平方メートル辺り120W(200W×0.6)、冬至で1平方メートル辺り342W(570W×0.6)となり冬の日射熱の取得量が大幅に増えます。南面は方角が真南から20度位のズレなら庇や軒で日射遮蔽が出来るので窓ガラスは断熱タイプが良いですが、県民共済住宅では遮熱タイプと断熱タイプの使い分けが出来ないのが残念です。理想は南面だけ断熱タイプで東西と北は遮熱タイプのガラスにするのが冬の日射取得と夏の日射遮蔽のバランスが取れていて良いです。高気密高断熱住宅のセオリーも南面は断熱タイプで東西と北は遮熱タイプを使用すべしと言われています。
冬の窓からの日射取得を最大化するためには
県民共済住宅では南面も遮熱タイプになりますが、冬の日射取得を最大化するなら窓枠が細くて窓ガラスの面積の割合が大きいFIX窓が最適です。滑り出し窓系はFIX窓よりも窓枠が太いので同じ窓サイズでもガラス面積が小さくなります。引違い窓系は窓の中央にフレームが入って2分割される分窓ガラスの面積が小さくなります。
ガラス面積の事だけ考えるならAPW330よりもサーモスXの方が窓枠が細い分ガラス面積が大きくなるので日射取得と採光面ではやや優れています。ガラス面積の割合の所は窓のカタログスペックには出てこない所なので余裕があればその辺りまで考えて窓の種類を選ぶと良いと思います。
ガラス以外の所では網戸があればその分日射取得量は低下するし、室内にレースカーテンを閉めたままにしても日射取得量は低下してしまいます。日射取得量を増やしたい冬場は網戸を外しておくのも地味に有効な対策です。もしくはオプションで透明度の高いクリアネット網戸を入れるのもありだと思います。
通風について
窓には通風の役割もあります。一般的には引違い窓よりも縦滑り出し窓が風を取り込みやすいと言われていて、最近TVCMでよく見かけるYKKAPのウインドキャッチ連窓の様に縦滑り出し窓を2つをある程度の距離を取って並べてそれぞれの窓の近い側を軸に開く様に設置すると効率良く風を取り込める様です。
縦滑り出し窓を複数設置するなら窓が開く向きにも注目して全部同じ側に開くのではなく、ウインドキャッチ連窓の開き方を参考にして開く向きを変えるとより多くの風を取り込めます。
また、風を通すには対角線に開く窓が来るようにすると風が通りやすいと言われています。南面に窓があるなら反対側の北面にも窓があるというのが理想ですが、1部屋で建物の南北や東西が繋がっている場所は少ないと思うのでその場合は別の面の外壁に風を通すための窓を設けるのが良いと思います。
ただ、通風に関してはそもそも窓を開けたいかという所から考慮すべきです。普段窓を開けない生活スタイルの人や交通量の多い幹線道路沿い等で窓を開けたくならない立地なら通風はそれ程考慮する必要も無いと思います。私は窓を開けない生活スタイルなので通風に関してはあまり意識しないで窓を配置します。
採光について
窓には採光という重要な役割があります。窓の数が多ければ多いほど明るい家になりますが、少ない窓で明るくするにはどうしたら良いでしょうか。
窓を着ける高さによって明るさが変わります
低い位置に窓を着けるのと高い位置に窓を着けるのとでは当然ですが高い位置に窓がある方が部屋の奥まで光が届くので部屋が明るくなります。ハイサイドライト(高窓)にすることで小さい窓でもより明るくすることが出来るので採光が主な目的の窓は高い位置に設置するとより効果的になります。
天窓について
窓の位置が高ければ高いほど明るいという一番の例が天窓です。天窓は狭い土地の住宅密集地でも採光が確保出来るので都心の狭小住宅では良く採用されていますね。県民共済住宅でもオプションで天窓が採用できます。
天窓があると採光面のメリットは絶大ですが、それ以外のデメリットも絶大です。一番大きいデメリットは夏の強烈な日差しが直接差し込んでくる点で南側の屋根に天窓を着けてしまう場合が一番最悪です。北側の屋根に天窓を着けることで多少マシになりますが天窓を着けると夏は確実に暑くなる事は覚悟しましょう。また、雨漏りのリスクも当然高まるのでその点も留意しておきましょう。
窓は家全体のデザインに影響を与える重要なアクセント
これまで窓の断熱性能や日射取得と日射遮蔽について説明しましたが、窓は家全体のデザインの要とも言える見た目的にも重要なポイントです。
窓の配置で見た目の印象が変わってくるのでどうしたら野暮ったくならないかを考えてみましょう。
窓の高さが揃っていないと違和感のある見た目になります
まずはサンプルとしてこの立面図を見てみましょう。この立面図は窓の打ち合わせをする前に私の提出した間取りを基に担当の設計士さんが作ってくれた立面図ですが、窓のバランスが悪いと変な見た目になる良い例だと思ったので公開します。
上の画像の左下の北面の立面図を見ると、1階の引違い窓と横滑り出し窓、2階の上げ下げ窓とFIX窓の高さが揃っていないのでなんか変な見た目になってしまっています。
南面の立面図もは2階の窓の上部分の高さが揃っているので他の方角の立面図と比べるとマシですが、2階左側の腰窓の下部分の高さが中央の縦滑り出し窓と揃っていたらもっと良い見た目になるし、1階ドア横の採光用のFIX窓の高さが隣のドアもしくは1階の掃出し窓と同じ高さになればスッキリした見た目になって違和感も消えると思います。
1階と2階の窓の位置を揃えるとスッキリします
東面の立面図を見てみると、1階のシャッター付き腰窓と2階の上げ下げ窓の縦のラインが揃っているので上下階での違和感があまりありません。1階の腰窓の横の小窓が邪魔で窓の配置のリズム感が崩れていますが窓の縦のラインを揃えると上下階での窓種が違っても違和感が出にくいことがわかります。
南面の立面図でも2階中央の縦滑り出し窓が3連してある下に1階の掃出し窓がありますが、1階の掃出し窓の左側に窓がない事で違和感が生じています。恐らくここに窓をつければ見た目的にマシになると思います。
窓の種類を揃えるのもポイント
窓の高さと上下階の窓の位置を揃えても完全には違和感が消えません。違和感の原因の一つが窓の種類が複数ある事だと考えています。
南面の立面図を見た時にもし2階の縦滑り出し窓が3連で並んでいる所が1階部分の掃出し窓と同じ幅の腰窓になったら見た目の違和感が無くなって普通の見た目っぽくなりますね。
窓の形や種類は出来るだけ絞る事で見た目の統一感も出てくるので可能なら同じ方角の面に何種類も違う窓をつけるのは止めたほうが良いでしょう。ただ、滑り出し窓系とFIX窓は外観が似ているので混在させても見た目的な違和感はほぼ無いと思います。
大手ハウスメーカーの様なオシャレな外観にするには
オシャレな家を建てる大手ハウスメーカーのWEBサイトやモデルルームの外観を窓に注目して見てみると見事に窓の位置や高さが縦横キレイに揃っていて統一感のある見た目になっていますね。例えば県民共済住宅と同じALCの外壁を使っているヘーベルハウスの家と県民共済住宅で建てた家を見比べると外壁の素材が同じでも外観はヘーベルハウスの方がやっぱり格好良くなります。
私は同じ建材を使っていても見た目に差がつく一番の原因は窓にあると考えています。窓の種類、大きさ、配置全ての要素が揃っていないと上の立面図の様にちょっと残念な見た目の家になってしまいます。県民共済住宅では間取りを施主がある程度考える関係上窓の配置は施主次第で建築士さんも外観のデザイン面を考えた間取りと窓の配置にはしないと思うのでそこが大手ハウスメーカーのモデルルームや規格住宅と異なる部分だと思います。
そして個人的に感じるのはオシャレな家に共通しているのは横長の引違い窓を殆ど使っていないという事です。引違い窓を多用するとどうしても「建売感」や「時代遅れ感」が出てしまう気がします。一般的な洋風の家なら窓の形が横長の長方形よりも正方形もしくは縦長の長方形の方がオシャレに見えやすいと個人的には思うので引違い窓よりは縦滑り出し窓だったりFIX窓だったり上げ下げ窓の様な縦長の窓の方が洋風の見た目の住宅にはマッチすると思います。
建築家が設計したような家は引違い窓を使っていても素敵なデザインになりますが、県民共済住宅で引違い窓を多用してオシャレに見せるには施主自身に余程センスがないと難しいと思いました。
窓を着ける場所は周りの隣家の窓と被らないようにした方が無難
家のデザインとは別に窓を着ける位置や高さが隣家の窓の場所と被らないようにした方がお互いのためです。間取りの都合上どうしても被ってしまう所は出てきがちですが、そういう窓はなるべく設けないかもしくはハイサイドライト(高窓)の様に高い場所に窓を置いて直接隣家の窓が視線に入らないようにするのも良い解決策です。
もし窓の正面に隣の家の窓があって時折視線が合うような事になるとお互い気まずいのでそのうちその窓は常にカーテンやシャッターが閉めっぱなしになり一体何のために窓を作ったのかわからなくなることも十分考えられます。そんな失敗をしないためにも隣家の窓の位置を考えつつ自宅の窓の位置を決めましょう。
隣家の窓と被りそうな場所の窓はガラスを型ガラスにしたり、窓の位置をハイサイドライト(高窓)の様に通常よりも高くして視線が合わない様にするのも良い解決案だと思います。
窓が多すぎると壁が少なくなり耐震性にも影響が出ます
窓は多すぎると耐震性にも影響が出る可能性があります。窓のある部分の壁は地震の揺れから家を支える耐力壁に出来ないので窓が多すぎると耐力壁の壁量が足りなくなり耐震的に弱い建物になってしまう恐れがあります。
その辺は建築士さんなら当然理解しているので窓が多すぎる間取りを提出しても建築士さんからこの窓は耐震的に無理と言われて設置できない箇所が出てきてしまうかもしれません。
また、建物の四隅に窓を設けるのも耐震的にあまり良いことではないので出来るだけ建物の角部分の壁には窓を設けない方が無難です。私の間取りだと2階の北東側とバルコニーの掃出し窓と1階ドアの部分が耐震的に良くなさそうなのでそれらの位置を動かすつもりでいます。
透明ガラスか型ガラスか
窓を着けた際によく聞く失敗例や後悔しがちなポイントとしてはガラスタイプが透明か型ガラスのチョイスを間違える事です。今私が住んでいる家でも隣家との距離が近い面の窓が透明ガラスでカーテンを閉めっぱなしという窓があるのでこれなら窓を着けないか型ガラスにしてプライバシーを確保した方が絶対良かったという窓があります。
普通の透明ガラスか型ガラスかの選定は施主の生活スタイルや周辺環境に大きく左右されるので一概にこれが正解とは言い難いですが、開放感を重視するなら透明ガラスの方が抜け感があるので開放的だし、プライバシーを重視するならカーテンを閉めなくてもプライバシーが保たれる型ガラスにするのが合理的です。
どちらのガラスを選ぶのが最適なのかは隣家の窓の位置や隣接する道路の人通りだったり見たい景色だったりと土地の状況をよく考えてからガラスの選定をすれば失敗はないと思います。
1階の道路に接する面に大開口の掃出し窓を設ける場合は特に透明ガラスか型ガラスにするかを熟考した方が良いと思います。人通りの多い通りに面する1階の掃出し窓は昼間でもシャッターやカーテンが閉まっている率が高いのでそんな窓なら思い切って型ガラスにしてしまうのもありです。
透明ガラスにするなら外構で高い塀や視線を遮れるフェンスか植栽を植えたりして外からの視線を遮る事を考えておいた方が良さそうです。この辺の考え方は人それぞれだと思うので外の視線が気になりそうなら対策は考えておいた方が住んでからのストレスが減ると思います。
ちなみにペアガラスの型ガラスの場合凹凸があるのはガラスとガラスの間の空気層側になり、ガラスの両外側の表面は透明ガラスと同じくフラットなので型ガラスにしたら窓が汚れやすくて手間がかかると言うことはありません。
防犯ガラスにした場合の性能の変化
防犯ガラスは普通のガラスと比べて割りにくく破片が飛び散りにくいという特徴があります。上のYKKAPショールームの写真を見ると割れサンプルがあるのでわかりやすいと思います。
普通のガラスを防犯ガラスに変えても熱貫流率や日射熱取得率の性能の変化はほとんどありません。
ガラスの性能面で一番変わるのがUVカット率です。UVカット率は遮熱タイプか断熱タイプや透明ガラスか型ガラスかでの差はほとんどありません。ガラスの色で51%〜77%と変わってきます。遮熱タイプや断熱タイプのブルー色だと77%位のUVカット率ですが防犯ガラスだとガラス色が何色でもUVカット率が99.9%や100%になります。APW330の一般向けカタログやAPW330の業務用カタログの最後の方のページにガラス性能の詳細な数値があるので興味がある方は目を通してみると良いです。
この事を考えると日焼けさせたくない場所の窓は防犯ガラスにしてUVカット性能を高めるという高度な使い方も出来そうです。
例えばウォークインクローゼットに窓を着けたいけど服が日焼けするのは困るという場合はUVカット率がほぼ100%の防犯ガラスにすると良いかもしれません。
県民共済住宅では1階のシャッターがつかない小窓は標準で防犯ガラスを入れられます。
防虫について
網戸を着けずに窓を開けておけば当然室内に窓から虫が入ってきますが、網戸を着けていても網戸が窓より内側にあると窓の開け閉めの際に先に網戸を開けてから窓を開け閉めする必要があるのでその隙に虫が入ってくるのは誰でも知っている事だと思います。
そこでより虫が入ってきにくい窓にするにはどうすれば良いか考えてみました。
普通の網戸より目の細かいYKKAPのクリアネット網戸を採用する
窓からの虫の侵入ルートとしてはまず1つは窓を開け閉めする際に網戸が開いた一瞬のタイミングがありますが、これは網戸を開けたスペースを虫に突かれるので窓の構造上仕方のない事です。
もう1つの虫の侵入ルートは網戸の目よりも小さい虫が網戸の目の間や隙間から入ってくることです。網戸の目から入ってこれるような小さい虫は刺さないので実害こそありませんが、ウザい事には変わりないので出来るだけ室内に入れたくないですね。
そこで普通の網戸よりも目の細かいクリアネット網戸を採用すると小さい虫が入ってきにくくなります。クリアネット網戸は普通の網戸よりも透明度も高く、遠目から見たら網戸があるかどうかも分からない位なのでぜひ採用したいオプションの1つです。可能なら網戸を全てクリアネット網戸にしてしまうのも良いと思います。県民共済住宅の施主ブログを見てもクリアネット網戸の採用率はとても高いし満足度も高いオプションの様なので是非採用したいオプションですね。
注意点としては滑り出し窓系のロール網戸の場合は価格がちょっと高くなるのとロール網戸だとクリアネット網戸の目の細かさが普通の窓のクリアネット網戸の目よりも荒くなるとYKKAPのショールームでスタッフさんから説明を受けたのでロール網戸になる窓は普通の窓より小さい虫が入ってきやすい可能性がある事でしょうか。カタログにもロール網戸の所に小さく注意書きが載っています。
網戸自体の強度も普通の網戸よりもクリアネット網戸の方が強くなっています。これもYKKAPのショールームでスタッフの実演付きで説明を受けました。このクリアネット網戸は目立った欠点が無い素晴らしい網戸なので予算に余裕が無くても住んでから確実に開けるであろう窓には採用した方が良いと思います。
滑り出し窓系ははめ込み式網戸になるオペレーターハンドルを採用する
縦滑り出し窓、横滑り出し窓を採用する場合、普通のグレモンハンドル(窓に着いている普通の持ち手)だと縦引きか横引きのロール網戸になり、くるくる回すタイプのオペレーターハンドルになるとはめ込み式(固定式)の網戸になります。
はめ込み式網戸だと窓の開閉時に網戸が閉まったままなので虫が室内に入ってきません。網戸にくっついている虫は窓を閉めた時に窓と網戸の間に挟まってしまいますが室内に入ってこられるよりはマシなので虫が嫌いな人はオペレーターハンドルを採用した方が良いと思います。私も縦滑り出し窓の採用予定があるので標準のグレモンハンドルからオペレーターハンドルに変えるつもりです。
県民共済住宅の滑り出し窓系は標準でグレモンハンドル&ロール網戸なので追加費用が発生しますがオペレーターハンドルにすることも出来るとの事でした。
防虫面で最強なのは窓の外側に網戸がある片上げ下げ窓とツーアクション窓
窓の種類によって網戸がある位置が違いますが、防虫を考えると窓の外側に網戸があった方が窓の開閉時に網戸が閉まったままになるので良いですよね。網戸が窓の外側になるタイプの窓は片上げ下げ窓とツーアクション窓があります。
県民共済住宅では片上げ下げ窓は標準で採用できるので虫嫌いなら片上げ下げ窓を多く使うのもありだと思います。片上げ下げ窓は引違い窓系なので窓の断熱・気密性能は落ちますが見た目が良く防虫面では最も優れているので結構使いどころのある窓ですね。
ツーアクション窓も外側に網戸が来ますが県民共済住宅ではそもそもツーアクション窓を使えないようでした。
最後に
間取りを考えて窓を配置する時に、窓一つ一つに対して求める役割を明確にすれば余計な窓が減って最適な窓の配置になると思います。何となくで余計な窓を作らないことが建物の断熱性能や日射のことを考えると重要です。この窓は採光目的で作るのか通風目的で作るのか、窓の外の眺望が良いから作るのか、冬の日射取得のために作るのかといった窓を作る目的を1つ1つ明確にすると窓に関する失敗が自ずと減るのではと思います。
昔と違って今の家は窓の種類が沢山あるのでどの窓を選べば良いかがわからなかったり、実際の使い心地や開け方が分からない場合はYKKAPやLIXILのショールームに行って案内してくれるスタッフさんに色々教えてもらうと良いと思います。YKKAPのショールームは窓を決める前に一度見ておくと窓の断熱性能の実感だったりこの窓を使いたいというイメージが湧くので時間があれば新宿のTDY東京コラボレーションショールームに行ってみると良いと思います。
私はこの記事を書く上で色々WEBサイトやYouTubeを見たり書籍なりで調べましたが、窓からどの位の熱量が入ってくるかを計算してみたら夏の東西面の窓からこんなに日射熱が入ってくるのかと驚きました。防犯ガラスのUVカット性能もカタログのガラス性能の数値をしっかり見るまでは気にしたことも無かったです。正直ブログを書いていなければ窓についてここまで詳しく調べなかったのでこの記事を書いたおかげで窓については相当詳しくなりました。
私の買った土地は東側が開けていて眺望も良いので大きめの窓にするのも良いかななんて思っていましたが、この記事を書きながら東面や西面から夏に入ってくる日射熱を計算してみると考えが変わり、出来るだけ小さい窓にしようと思いました。
窓は少なすぎても多すぎてもダメという非常に難しい部分です。窓の配置で建物のデザインの印象も大きく変わるので外からの見た目と施主にあった間取りと性能を高いレベルで実現できる設計者は本当に凄いと思います。
私は次の設計士さんとの打ち合わせで窓について決める予定なので打ち合わせでなにか新しい情報だったり気づきがあればこの記事に追記するか新しい記事を書こうと思います。