一般社団法人みんなの住宅研究所という団体がエンドユーザー向けに推奨仕様リストを公開してくれています。家を建てようと思った時にどれ位の性能にしたら良いかの目安としてとても有用なリストになっています。これらのリストに目を通した上で自分が検討しているハウスメーカーや工務店の仕様と突き合わせて見るとハウスメーカーや工務店の良し悪しが見えてくると思います。
また、間取りや家の形、屋根の形と言ったデザイン的な所でも実は結構構造や耐久性に影響してくる部分があるのがわかります。建築のプロでもない普通の素人の施主が家を建てようとすると素人目線からは見当もつかない部分で耐久性や構造に影響があったりするので、そういう部分を事前に把握できるのもこのリストの有用な部分だと思います。
みんなの住宅研究所では断熱(省エネ)、構造、耐久性の3つの項目の推奨仕様リストを公開しています。断熱(省エネ)に関しては別記事の「県民共済住宅で「みんなの住宅研究所」の断熱推奨仕様をどれだけ満たせるか」と「県民共済住宅で「みんなの住宅研究所」の構造推奨仕様をどれだけ満たせるか」で検証していますが、今回は耐久性についてチェックしてみます。耐久性に関しては不明点も多く前の2記事から随分間が空いてしまいましたがせっかくなので記事を書き上げました。
耐久性は中々施主が意識した所で変更出来ない部分が多いので重要なのは理解できるけどどうにもならない点も多いですが、特に玉石混交の工務店選びをしている最中なら良い工務店を選ぶ為に知っておいた方が良いかもしれません。
私は県民共済住宅で家を建てるので、県民共済住宅で「耐久性」の推奨仕様リストをどれ位満たしているかチェックしていきます。項目によっては不明な点もあるのでご容赦下さい。
耐久性
みんなの住宅研究所の推奨仕様リストの「耐久性」では10項目の考慮すべきポイントが挙げられています。推奨仕様リストの見方は下記の様にABCの3段階に分かれています。
- A. 現状の問題点
- B. 当団体が考える推奨レベル
- C. 当団体が考える理想レベル
ABCそれぞれの意味合いは下記の通りでAだと不合格、Bでギリギリ合格、Cで合格という感じです。
「A」の内容は最低限もしくは問題ありという点で、当団体は2021年以降に建築する住宅としては性能が不足していると判断します
「B.当団体が考える推奨レベル」の内容は、当団体が考える押さえておくべきレベルです
「C.当団体が考える理想レベル」の内容は、当団体としてB.の推奨基準を上回る理想的なレベルです
一般社団法人みんなの住宅研究所の【みんなの住宅研究所】推奨仕様リストについてより引用
屋根形状
A:現状の問題点
- (屋根断熱時)屋根形状が寄棟・方形が採用されている
- 軒の出がない
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- (屋根断熱時)屋根形状が切妻・片流れである
- 壁に雨水がかかからないように軒の出がある
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 物理的に雨水が排出できる構造となっている(シーリングに頼らない施工が行われている。)
県民共済住宅では軒の長さをある程度(最大72cm位)決められるので軒ゼロではありません。また、県民共済住宅の標準的な屋根の断熱は屋根断熱ではなく天井断熱になります。もし最上階を勾配天井にした場合のみ勾配天井の部分だけ屋根断熱になります。
これらの事を考えると標準で「B」はクリアできていると思います。デザイン重視で軒ゼロにしたいなら軒ゼロのデメリットについても把握しておきましょう。
小屋裏・天井断熱
A:現状の問題点
- 住宅金融支援機構の小屋裏換気基準ギリギリを狙う
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 小屋裏換気基準をクリアしている
- 屋根や界壁毎に換気量を確認している
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 地域毎に換気量の補正を検討している
- 通気経路の欠損がないように経路を確保する
県民共済住宅は天井断熱が基本です。最上階で勾配天井にした場合や昔オプションで存在していた吹付け断熱を選択した場合はその部分だけ屋根断熱になります。
小屋裏の換気については契約時の書類に換気計算をして規定の換気量をクリアしているので「B」に該当すると思いますが、私の家はシンプルな切妻屋根なので、寄棟屋根や方形屋根だったり、複雑な屋根形状の時はどうなるかわかりません。小屋裏の換気については担当の設計士に確認しましょう。
この棟換気が上手く行かないと夏季の強烈な日射で屋根が暖められ、その熱が小屋裏に伝わり、天井の断熱材では防ぎきれない暑さが2階の天井付近に伝わって2階(最上階)が強烈に暑くなりやすいです。棟換気が上手く行けば小屋裏の暑い空気をある程度排出出来て小屋裏の気温が多少マシになるので最上階が暑くなるリスクが少なくなります。最上階の天井付近が夏に暑くなるのが嫌なら棟換気を考慮した上で天井の断熱材を強化出来る高断熱仕様のオプションを入れると良いと思います。
小屋裏・屋根断熱
A:現状の問題点
- 換気棟が設けられていない
- 屋根形状が寄棟・方形が採用されている(換気経路を確保されているものは、除く)
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 換気棟が中央に設置されている
- 垂木毎に換気経路を確保する措置が行われている
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 棟長さ全長に換気棟が設置されている
- 通気経路の欠損がないように経路を確保している
県民共済住宅だと通常は天井断熱になるので最上階の天井を勾配天井にしている人以外はこの項目は無視して構いません。
バルコニー
A:現状の問題点
- 手摺天端に貫通穴を設けて、止水処理が考慮されていない
- 手摺壁通気層天端を閉塞している
- ルーフバルコニーの床下が、換気させていない
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 天端の貫通穴は、止水処理を行う
- 手摺壁通気層天端を閉塞していない
- ルーフバルコニー床下の換気をする
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- できるだけ天端に貫通穴を設けない
- 手摺壁通気層天端に専用の換気部材を設置する
- ルーフバルコニー床下に計画的に換気経路を設け、換気する
バルコニーに関しては私の知識と情報では判断できません。担当の設計士に確認してみて下さい。
外壁
A:現状の問題点
- モルタル・レンガの直貼り(施工湿気の排出が考慮されている製品は除く)
- 通気層は設けているが通気経路が確保されていない
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 通気構造となっているが、雨仕舞が考慮されていない
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 通気構造となっている外壁
- 吸気・排気部に通気部材が使用している
県民共済住宅の外壁には通気層が設けられているので最低でも「B」は満たしています。多分「C」も満たしているのではないかと思いますが確認したわけではないのでなんとも言えません。
内部結露
A:現状の問題点
- 結露計算による内部結露の検討が行われていない
- 工事中の雨がかりにより木材に水分が保持され、腐朽原因になっている
- 未乾燥材が使用されている
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 結露計算を行っている
- 工事中に雨水にかからないように、養生する
- 乾燥木材を使用している
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 工事中雨水にさらされても大丈夫な通気経路を確保している
- 棟および外壁長さ全長に換気・通気部材を設置している
結露計算を行っているかどうかを担当の設計士さんに聞いたのですが県民共済住宅では結露計算を行っていないので「A」になります。
県民共済住宅では耐力壁と透湿防水シートは決まった製品を使用している訳ではなく、施工エリアや担当の設計士次第で変わってくるとの事でした。参考までに私の場合は透湿防水シートが「タイベック」で耐力壁が「構造用スターウッド」です。他の施主ブロガーさんの施工状況を見る限り、耐力壁に「ダイライトMS」、透湿防水シートに「SUPERコートMAX」が使われている現場もありました。
それらの部材の性能から判断すると内部結露のリスクはそれ程高くないとは思います。担当の設計士さんが言っていたのは結露計算はしないけど問題がおきない様な部材を使っているとのことでした。
防腐・防蟻
A:現状の問題点
- 防腐・防蟻処置が行われていない
- 基礎外断熱(耐久性に配慮した処置および地域性を考慮した場合は除く)
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 数年に1度の再処理が必要な防腐・防蟻措置が行われている
- K3以上の防腐・防蟻処理を行った土台」か「ヒノキ等の高耐久樹種の土台」のどちらかを使用されている
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 半永久的に使用できる防腐・防蟻措置が行われている
県民共済住宅は基礎外断熱ではなく床断熱になり、構造材は檜かつ防蟻処理が施工中に必ず行われるので「B」になります。防蟻処理は数年毎に行う必要があるので半永久的に持つ訳ではありません。
性能表示等級の劣化対策等級3
A:現状の問題点
- 性能表示の劣化対策等級3の項目を実施していない
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 性能表示の劣化対策等級3の項目を実施している
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 性能表示の劣化対策等級3以上の対策を行っている
県民共済住宅のWEBサイトの「品質」ページにある様に劣化が「3」とあり、劣化対策等級3は標準でクリアしているので「B」以上は確実です。
床断熱
A:現状の問題点
- 400mm以下の基礎高さ
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 400mm以上の基礎高さ
- 換気措置を設けられた床下
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 400mm以上の基礎高さ
- 換気措置を設けられた床下
- 防湿措置が行われた床下
県民共済住宅の基礎はベタ基礎でキソパッキング工法です。県民共済住宅の矩計図を見ると基礎の立ち上がりの高さは標準で基礎パッキン部分を含めて最低470mmあるので「B」以上は確実です。「C」の防湿処理が行われているかまでは判断出来ません。
基礎断熱
A:現状の問題点
- 基礎外断熱(耐久性に配慮した処置および地域性を考慮した場合は除く)
B:みんなの住宅研究所が考える推奨レベル
- 定期点検を行っている
C:みんなの住宅研究所が考える理想レベル
- 定期点検を行っている
県民共済住宅の場合は標準が床断熱になり、土間部分やユニットバス部分も基礎断熱にはならないのでこの項目には該当しません。
県民共済住宅の耐久性について
耐久性という素人からしたら中々判断出来ない部分を検証してみましたが、やはりわからない点が幾つかありました。不明点は担当の設計士に確認してみて下さい。
ただ、概ね「B」を満たしている項目が多いのでそれ程心配するレベルでは無さそうです。耐久性に関しては施主の選択で改善できる余地がほとんどありません。
最後に
県民共済住宅の仕様で断熱、構造、耐久性の推奨仕様リストと突き合わせてみましたが、総合的に判断すると断熱は物足りない、構造は大体合格、耐久性もほぼ合格と言った感じでしょうか。これらのリストの中には施主の間取りや仕様の選択次第でどうにでもなる部分もいくつか含まれていたのでそういう部分を把握しておくと良いと思います。
このリストは主に施主が工務店やハウスメーカーを選別する段階で役に立つリストだと思いますが、既にどの工務店やハウスメーカーで建てるか決まっている人にも役に立つ有用なリストだと思います。
家づくりの情報はわざわざ本を買わなくても良質な情報がネット上に存在するので今後他にも役に立ちそうな物があればブログで紹介したいと思います。