書斎はコロナ禍でリモートワークの普及により爆発的にニーズが増した部屋です。今から注文住宅を建てるなら書斎は必須ではないでしょうか。そこで質の高い仕事をするための書斎について真剣に考えてみました。
コロナ前なら家でがっつりリモートワークをする必要があまりなかったので書斎の重要性はそこまで高くなかったと思いますが、コロナ禍でリモートワークをする機会が増えた今は書斎のような家で仕事をするためのスペースがとても重要になっています。
以前の書斎と言えば「趣味部屋」みたいな感じのスペースでしたが、これからの書斎は「仕事部屋」どころか「事務所」位の充実した仕事環境を整える必要が出てきています。コロナ禍でリモートワークが急速に普及してからまだ1年しか経っていないのでリモートワークを行うための定番と言える環境がまだ定まっていない中、自宅に自分専用のオフィスを作るにはどうしたら良いかを考えてみました。
現代の書斎にはネットワーク環境が必須
リモートワークをするために必要になるのはまずは安定したネットワーク環境です。家に最低でも100Mbps以上の速度のインターネット回線が引き込まれているのが前提で、更に有線LANが書斎に引いてあるか、もしくはWIFIの電波が書斎で安定して拾える事が必須です。
書斎を仕事部屋として使うなら有線LANを引いた方が良いと思いますが、もし有線LANを書斎に引かない時はWIFIアクセスポイントを置く場所と書斎が距離的に離れすぎていないかチェックしましょう。小さめの家なら大丈夫だと思いますが、大きな家の場合は電波が届くかどうかまで気を使った方が方が良いです。効率良くWIFIの電波を家中に届けるなら家の中央付近にWIFIアクセスポイントを設置すると広範囲に電波を届けられます。
インターネット回線を書斎に引き込み、書斎にルーターとWIFIアクセスポイントを置いて家のネットワーク環境を一元管理するような方法もありだと思います。書斎にルーターやWIFIアクセスポイントがあればネットワークのトラブル時にすぐに対応しやすいメリットもあります。突然ネットに繋がらなくなった時にルーターのLEDランプやWIFIアクセスポイントのLEDランプが見えると問題解決が早まります。
コンセントは多めに確保しよう
ネットワーク環境の他には言うまでもないですがコンセントも必要です。コンセントの場所は床付近の低い位置よりも机の上にあった方が便利です。もしデスクトップPCを机の下に置いて使うなら床付近にもコンセントがあると良いと思います。
PCを使うならコンセントは多めに作っておいた方が便利です。ノートPCなら電源用のコンセント1口で足りますが、デスクトップPCやデュアルディスプレイの様なマルチディスプレイ環境にするならディスプレイ分のコンセントが必要になります。外付けHDDやプリンターを使う場合もコンセントが必要になります。その他にスマホやタブレットの充電器も必要になると思うので電源タップを使わないならコンセントが2口だけでは多分足りません。
コンセントが足りなくなったら電源タップを使ってタコ足配線にすれば良い話ではありますが、2口コンセントを4口にしたり机の左右に2口ずつコンセントを作るなりすれば配線もすっきりしそうです。
床付近の低い位置にコンセントを作ってそこから電源タップでタコ足配線すると配線が邪魔になります。特にロボット掃除機を導入する場合はロボット掃除機が掃除中に床のケーブルを巻き込むとロボット掃除機がケーブルに絡まって動けなくなったりして面倒な事になりかねないので極力床の上にケーブルが這わない様にした方が見た目的にも実用的にも良いと思います。
リモートワークに適した椅子
質の高い作業をするなら椅子にお金をかけてちゃんとしたワーキングチェアを買った方が疲労が溜まりにくくなり作業に集中できます。椅子の質は見事に仕事の質にも反映されるのでここは投資を惜しむべきではありません。
座卓の様な書斎で背もたれがない環境の書斎やローテーブルの書斎で地べたに座っての作業が前提の書斎も稀に見かけますが、集中してPCを使った仕事をするならこのような書斎は問題外と言えます。
実際に会社のオフィスで座卓に座って作業をしたり、地べたに座ってキーボードをカタカタ打つことなんてまずありませんよね。数十分もしたら肩が凝ったり腰が痛くなるような作業環境では仕事が捗らないのでそのうち書斎を使わなくなると思います。
上のハーマンミラーのアーロンチェアの様なちゃんとした椅子があると作業効率が上がります。アーロンチェアは私も2011年8月にAmazonで9万円位で購入して10年間使っていますが3万円位の安いPC用の椅子とは座り心地が全然違いおしりが痛くなりません。メッシュ状の椅子なので座っていて蒸れにくいのもこの椅子の良い点です。欠点は価格が高いのと椅子の底と背もたれ部分がメッシュ状になっていて、椅子の下の所に埃が溜まってその掃除がとてもしづらい事です。
アーロンチェアを10年使っていますが故障や劣化、へたった感じもないので耐久性もあると言えます。ちなみにこのブログもこの椅子に座りながら書いています。
椅子に10万円も出せないなら最低でもリクライニングする椅子が良いと思います。肘掛けもあった方が楽です。こういうタイプのオフィスにあるようなワーキングチェアは足に硬いキャスターがついているので、パイン材の無垢床の様な柔らかい床には不向きです。椅子は余程これが欲しいという物が無ければ家具屋で実際に座ってみてしっくり来る物を買うのが確実です。
安いからと言ってダイニングチェアみたいな長時間座り続けることを想定していない椅子を買うとおしりや腰が痛くなって辛いので椅子は出来るだけちゃんとした物を購入すると良いと思います。予算が少ないなら中古のオフィス家具は結構狙い目かもしれません。
書斎に適した床材はキャスター対応の傷つきにくい床
椅子をワーキングチェアにすると考えると書斎の床材はキャスターに対応した突板や化粧シートなどの安い床材の方が向いていると言えます。県民共済住宅ならニレなどの標準の床材が余計な費用もかからず表面が硬いので最適でしょう。無垢や挽き板の床なら床の上にカーペットか何かを引いてキャスターの傷対策をしないといつの間にか床が傷だらけみたいな事になりかねません。標準の床材でも傷が心配なら床の上にカーペットなどを敷いておくと安心です。
上の写真の県民共済住宅の標準床材のニレは県民共済住宅新都心本店の展示スペースのキッチンが展示されている所の床ですが、多くの見学者が土足で歩き回る割には2018年5月施工の床でも傷や凹みがそれ程多くなく、キャスター対応の床材なので傷には強そうです。
書斎にカウンターを造作するなら奥行と高さはしっかり考えよう
書斎の机は建設時にカウンターを造作してもらうか市販の机を入れるかの2択になりますが、これに関してはどちらでも良いと思います。2帖や3帖位のコンパクトな書斎ならカウンターを造作した方が机周りに無駄なスペースが無くなりスッキリ収まると思いますが、普通の大きさの部屋を書斎にするなら市販の机を入れた方が将来的な部屋のレイアウト変更にも強いです。机の場合は引き出しが付いているのも良いですね。
カウンターを造作すると小さな書斎の部屋でも無駄なく作業スペースが確保できます。カウンターを作るなら床からの高さを何cmにするかを考えましょう。一般的には720mmが標準的な高さと言われているのでその辺りの高さにカウンターを設けると違和感が少ないと思いますが、身長の高い人はもう少し高さを上げた方が使いやすくなると思います。
カウンターの奥行ですが、これはあまりに奥行が狭いと作業性が落ちます。400mm位あればノートPC単体での作業は問題ないですが、書類を見ながらノートPCを使ったり、デスクトップPCを使うなら正直狭いと思います。作業性を考えるなら600mmや700mm位カウンターの奥行があると横幅がそれ程取れなくてもディスプレイや書類等を置くスペースが確保できます。ちなみにオフィス机は700mmの奥行の物が多いです。
カウンター材は県民共済住宅のカウンター材が価格的に一番安いみたいですが、ウッドワンやDAIKEN等の県民共済住宅で取扱があるメーカーのカウンター材も入れられます。
カウンターを造作する際の注意点ですが、マルチディスプレイにする時にデスクマウントタイプ(クランプ式)のモニターアームを使うならモニターアームを設置する所に予め穴を開けておくか奥の壁から離してカウンターを付ける必要があります。ウォールマウントタイプのモニターアームを使うなら壁に下地があった方が良いでしょう。
デスクトップPCを床置きする場合もカウンターにディスプレイやキーボード、マウスなどのケーブルを通すための穴を開けることを忘れないようにしましょう。もしくは壁掛けTVの様に壁内配線にするという手もありかもしれません。
書斎は個室にした方が遮音性が高いので有利
書斎を個室にするか階段ホールやLDKの一角にカウンターを用意して共有のスタディースペースの様な書斎にするかは中々悩ましい所です。個室の書斎だと遮音性が高いのと、籠もる事で集中して作業が出来るのがメリットです。デメリットは空調をどうするかという所でエアコンをつけるか部屋間の換気扇をつけるかドアを引き戸にしてドアを開けておくかする必要があります。
共有スペースを書斎にすれば空調問題がなくなり、開放感があり、家族との繋がりを感じながら仕事が出来るというメリットがありますが、デメリットはリモート会議や電話で通話しながら仕事をするのには向いていない事です。
やはりがっつり仕事をしたいなら集中出来る個室の方が向いていると思います。
個室の書斎に必要な部屋の広さ
書斎に必要な広さは最低でも1帖は必要です。縦が1,820mmで横が910mm程あれば横幅が910mm(有効幅は760mm位)になるのでカウンター(机)と椅子を置いて仕事が出来るスペースになると思います。現実的に1帖だとカウンターの部分がやや小さいので縦1,820mmで横が1,365mm位の1.5帖なら机の有効幅も1,200mmは取れるので作業もしやすいと思います。
書斎に書類や本などの収納スペースを設けたいなら収納量にもよりますが最低でも縦横1,820mmの2帖位は欲しい所です。2帖もあれば1人で仕事をする上で問題ないと思いますが、3帖位あるとゆとりある書斎になると思います。
夫婦共働きでどちらもリモートワークを行う場合は個室の書斎が1つだけだと足りないので書斎を2つ設けるか、もしくは個室の書斎は1箇所だけにして、その代わりLDKにも家族共有のスタディースペースを設けて、基本はLDKのスタディースペースで仕事をして、電話やリモート会議をする時は個室の書斎に移動する様な運用でも良いかもしれません。
リモートワークでプリンターや複合機が必要ならプリンターをどこに置くのかも考えましょう。プリンターは書斎の外に置いてネットワークで共有すると1台のプリンターを家族全員で使えるので無駄がなく良いと思います。
この辺は夫婦それぞれがどんな仕事をしているかによって最適解が変わると思います。
小さい個室の空調問題はエアパス用ファンで解決
長時間個室の書斎に籠もって仕事をする場合はエアコンが必要です。ただ、エアコンの最小帖数は6帖用が最低なので2帖か3帖の部屋に6帖用エアコンをつけるのは非常にもったいなく感じてしまいます。
そこで、エアコンではなく上の写真の様な部屋間の換気扇をつけてみてはいかがでしょうか。三菱電機のエアパス用ファンという中々便利な代物があるのでこれを壁に装着すればわざわざ書斎にエアコンを設置しなくても隣の部屋のエアコンの風を書斎へと送り込む事が出来ます。
この三菱電機のエアパス用ファンは県民共済住宅でも個別見積で設置する事が可能です。私は直径12cmのV-12PF7と直径8cmのV-08PF7の2つのエアパス用ファンを部屋の大きさによって書斎やその他の部屋で使い分けています。
消費電力も12cmの方が3.2Wで8cmの方が1.6Wと超省エネです。直径12cmの月の消費電力は3.2W×24時間×30日=2.304kWとなり、月の電気代は2.304kW×電気代単価30円=69.12円と24時間つけっぱなしでも月70円位なのでエアコンを1台つけるよりも遥かに安い電気代と初期費用で部屋の快適性を得られます。直径8cmの方は消費電力が直径12cmの半分なので電気代も半分の月35円程度になります。
県民共済住宅の標準のダイキンFXシリーズの6帖用エアコンを部屋に着けて可動させた場合、最低でも130W(カタログの最低消費電力)の消費電力になるので月の電気代は130W×24時間×30日=93.6kW×30円=2,808円と24時間エアコンをつけっぱなしにすると3千円位かかることになります。勿論書斎にいない時間はエアコンを止めると思うので実際はその4分の1か5分の1位の電気代になると思いますが、電気代だけで言えば換気扇を回すよりも月500円位は高くなると思います。
電気代の差額自体は数百円〜千円位なのでそんなに気にする金額ではありませんが、初期費用が換気扇は定価で直径12cmが15,400円(税込16,940円)で6帖用エアコンは県民共済住宅価格で税込83,160円と6万円以上差があるのでもし換気扇設置の工賃がかかったとしても5万円位は節約出来ると思います。
個室の書斎の収納について
2帖位の狭い書斎を作ると収納スペースも少なくなってしまいます。そこで有効活用したいのがカウンターや机の上の天井から1m位のデッドスペースです。窓が正面にあるとこのスペースは使えないですが、窓が机の側面か後ろにある場合は机の正面の壁の天井付近がデッドスペースになるので有効活用したい所です。
もしマルチディスプレイにしてディスプレイを上下に組み合わせる様な使い方をするなら上のスペースに棚をつけてしまうと邪魔になってしまいます。そういう用途を想定するなら棚は作らない方が良いでしょう。
天井付近のスペースに棚を作る場合、棚の高さは床上から1,400〜1,600mm位で棚の奥行は300〜400mm位が良いと思います。奥行が広すぎると圧迫感が出る可能性があるのであまり奥行が広い棚は作らない方が良いと思います。
書斎に本棚が欲しいなら椅子の後ろの背中側のスペースや左右どちらかのスペースに本棚を設置するのが良いと思います。背中側のスペースの本棚が沢山の本で埋まっているとリモート会議の背景としても良い感じになると思います。
本棚の奥行は300mm前後が一般的です。奥行が250mm位あれば雑誌のような大きな本でも収まります。ただ、250mmだととても大きな本がちょっと飛び出る可能性があるので280mm位の奥行を持たせた方が無難です。
漫画の単行本なら本棚の奥行が150mm程度で2、3cm位余裕がある感じになります。本棚の奥行の正解はどんな本を収納するかによって全然変わってきます。本棚を造作する場合は特にどんな本を入れるかをきちんと考えて奥行を決めましょう。
書斎の照明計画
書斎の照明の注意点としてはPCのディスプレイに反射する位置に光源があると眩しくて画面が見づらくなります。そういう意味では天井に明るすぎる照明を付けると画面がかえって見づらくなるのでシーリングライトなら明るすぎないものや調光機能がある物が良いですね。手元の明るさを確保したいなら天井照明を明るくするのではなく補助的にデスクライトを置くのが良いと思います。
照明の色も「昼光色」、「昼白色」、「電球色」とありますが、昼光色や昼白色は脳を活性化して単純作業に向いているのでオフィスの作業スペースでは昼光色や昼白色の照明が多い様です。電球色はリラックス効果を高め、クリエイティブな作業に向いているので読書部屋や趣味部屋の様ながっつり仕事をしない用途の書斎に向いています。
照明の最適な明るさは壁紙の色(光の反射率)によっても変わるので専門家ならともかく、素人が最適な照明の明るさや色を事前に考えるのは難しいので書斎には調光機能と調色機能があるシーリングライトやダウンライトが良さそうです。調光機能や調色機能があれば眩しすぎたり暗すぎたり、照明の色がしっくり来なかったりという照明計画の失敗を無くせると思います。
書斎の照明計画はオフィスコムマガジンの解説が役に立ちました。会社のオフィス向けの照明計画の記事なので家庭向けではないですが、働く環境を整える意味ではむしろオフィスの要素を取り入れた方が良い書斎になりそうです。
後はディスプレイの裏側の壁を間接照明で照らすのも目に優しい上良い感じの雰囲気になるので良さそうです。照明計画は奥が深いですね。
最後に
書斎について真剣に考えてみたらこんなに考えることが多いのかと記事を書きながら自分でも驚いています。注文住宅って本当に考えることが多いですね。
書斎でどんな仕事をどんな機材でどういう風に行うかが具体的にイメージ出来れば良い書斎に出来ると思います。会社員の方は会社のデスクの大きさや高さをメジャーで計ってみたり、机の上に何を置いているかや引き出しの中に何を入れているかやオフィスの照明の明るさやどんな光の色なのかを再確認してみると書斎づくりの色々なヒントが得られるかもしれません。