当サイトの県民共済住宅に関する情報は2021年9月契約、2022年4月引き渡し時点での情報を元に記載されています。

当時と現在とで仕様やルール、価格などの前提条件が異なり、記事の内容が間違っている可能性があるのでご注意ください。

県民共済住宅の標準はダクト式の第3種換気システムですが、約10万円のオプションでダクト式の全熱交換型の第1種換気に変更することが出来ます。

換気システムは3種が良いか1種が良いかはプロでも賛否両論ある部分なので中々我々素人が判断するのは難しい部分です。特に換気システムについて詳しく言及しているプロの方は例外なく高気密高断熱住宅を建てる方々なので、まずC値1以下の高気密住宅が前提で話をしていて、県民共済住宅の様な高気密ではない中気密位の家だとどちらが良いかを判断するための判断材料が少ないのでとても迷う所です。

県民共済住宅の施主ブログでも換気システムについて書かれた記事をほとんど見かけないのはやはりどっちを選んで良いかわからないから記事を書きようがないというのが大きな理由だと思います。私は高気密高断熱住宅を目指すブログを書いているので換気システムについてはいつか記事を書くつもりでいましたが、内心誰か他のブロガーさんが換気システムの記事を書いてくれないかなーとか思っていました。

とりあえず私なりにわかる範囲の情報をまとめてみました。換気システム選びの参考になれば幸いです。

第3種換気システムとは

県民共済住宅標準の第3種換気システム
県民共済住宅標準の第3種換気システム

第3種換気システムは、給気が壁に給気口(穴)を開ける自然給気、排気が換気扇での機械排気になっている換気システムです。

排気用の換気扇を回すと換気扇から室外に空気が排出されて、排出した空気の量と同じ量の空気が給気口や家の隙間から入ってくるので換気が成立します。

第3種換気システムは外壁部分に普通の換気扇を壁にポン付けするダクトレス方式の第3種換気と排気用の換気扇を天井や床下等に設置し、各部屋の天井に排気用のダクトを設けるダクト式セントラルの第3種換気の2種類がありますが、県民共済住宅の標準はダクト式セントラルの第3種換気システムになります。

ダクト式セントラルの場合は各部屋の天井部分に排気口を設けるのでダクトレス方式よりも各部屋の換気がきちんと出来るというメリットがありますが、デメリットはダクトレス式の換気扇よりも価格が高い事があげられます。

第3種換気システムのメリット

  • 初期費用が安い
  • メンテナンスの頻度が低い
  • 換気扇が1台だけなので電気代が安い

第3種換気システムのデメリット

  • 冬の寒い時期は特に給気口からの冷気が気になり不快
  • 熱交換器が無いので全熱交換型の第1種換気システムよりも冷暖房費がかかる
  • 給気フィルターが第1種換気システムの給気フィルターよりも目が粗いので花粉やPM2.5の様な小さい粒子はフィルターで除去出来ない
  • 気密性が高くない住宅では上手く換気が出来ない(特にダクトレス式)
  • 室内が負圧になる

第1種換気システムとは

県民共済住宅オプションの全熱交換型第1種換気システム
県民共済住宅オプションの全熱交換型第1種換気システム

第1種換気システムは給気が換気扇による機械給気で排気も換気扇による機械排気の換気システムです。

給排気とも機械で行うため安定した給気量と排気量が確保出来るため確実に換気が出来るというメリットがあります。また、第1種換気の場合は排気する際に熱交換器を通して排気で捨てられてしまう熱を回収する全熱交換型の第1種換気システムが現在の主流になっています。

全熱交換型のメリットは第3種換気システムだと室内の空調された熱を排気する時にそのまま室外へと排出し、給気は外気をそのまま室内へと引き込むので特に冬だと給気口付近が寒いという問題が起こりますが、全熱交換型の第1種換気システムの場合は室内の空調された熱(温度、湿度両方)を熱交換器である程度回収し、外気を給気する際に熱交換器で回収した熱を再利用する様な仕組みになっているので冬でも室温が下がりにくく、更に湿度まで回収するので過乾燥になりにくいというメリットがあります。

第1種換気システムには一般的にフィルターが装着されていて、空気清浄機みたいに汚れた外気をフィルターでろ過してから室内に給気するので空気がキレイというメリットもあります。ただし、第3種換気システムのフィルターとは異なり、こまめなフィルター掃除が欠かせないという面倒な一面もあります。

フィルターの掃除を怠るとフィルターが目詰まりして換気量が減ったり、カビが生えたり、フィルターが目詰まりして取り切れない埃やゴミが吸気側のダクト内に溜まってしまう等の厄介な問題が起きるので第1種換気を採用するなら定期的なフィルター掃除を欠かさない事が大切です。

第1種換気システムは給気を換気扇で行うので、換気扇の風圧で空気だけではなく小虫も吸い込んでしまうというデメリットもあります。虫はフィルターでブロックされるので室内に入ってくることはありませんが、虫の死骸がフィルターにこびり付いてしまうという事もあり得ます。虫は生理的に無理な人は第3種換気の方が良いと思います。

全熱交換型第1種換気システムのメリット

  • 給排気とも機械で行うので確実な換気が可能
  • 給気時にフィルターを通すので入ってくる空気がキレイ
  • 排気時に熱交換を行うので換気で熱が逃げにくくなり、第3種換気システムより冷暖房費が安くなる
  • 排気時に熱交換を行うので給気口付近が寒くなりにくい
  • 湿度(潜熱)も熱交換器で交換されるので冬は湿度を高く保ちやすくなり、梅雨の時期は湿度を低く保ちやすい
  • 室内が負圧にならない
  • PM2.5や花粉に対応した目の細かいフィルターを導入すれば給気口からの花粉やPM2.5の侵入を防げる

全熱交換型第1種換気システムのデメリット

  • 給気と排気でファンを2つ使うので排気用のファン1つの第3種換気システムより消費電力が高くなる
  • フィルターのメンテナンスが月1回は必要で、メンテナンスを怠るとフィルターが目詰まりして換気量が減少したりカビが生えたりする等の不具合が起きる
  • 第3種換気システムよりも価格が高い
  • 夏の夜などの室内よりも室外の方が快適な気温の場合、熱交換器がある分換気で外気温に近づけられない
  • 気密性が低い住宅では換気システムを通さない空気の出入りが多くなるので熱交換器やフィルターの性能が発揮できない
  • ダクト式の場合は吸気側のダクトの汚れが気になる
  • フィルターに小さい虫がこびり付いている事がある

県民共済住宅で採用出来る換気システムを比較

上記では一般的な第3種換気システムと第1種換気システムの特徴について記載しましたが、県民共済住宅で採用出来る換気システムの機種に絞って比較してみます。

県民共済住宅では標準仕様が第3種換気システムで、オプションで第1種換気システムを導入できます。

標準のダクト式セントラル第3種換気システム

東プレ第3種換気システム TVS-270Sの本体裏側(2021年契約まで)
東プレ第3種換気システム TVS-270Sの本体裏側(2021年契約まで)
東プレのWEBサイトから転載
東プレのWEBサイトから転載

県民共済住宅の標準仕様の換気システムはダクト式セントラル第3種換気システムで、東プレのTVS-270Sという機種になります。この機種については製造メーカーの東プレのWEBサイトを見てもカタログや製品の詳細ページが無いので詳細なスペックが不明でしたが、問い合わせフォームからこの機種のスペックを教えて頂けないか問い合わせた所、返信でカタログのPDFを送って頂けました。

東プレのTVS-270Sのカタログから転載
東プレのTVS-270Sのカタログから転載
東プレのTVS-270Sのカタログから転載
東プレのTVS-270Sのカタログから転載

このカタログは東プレのWEBサイト上では現時点で載っていない物なので実は結構貴重な資料です。東プレに直接問い合わせて入手しました。

この換気扇の消費電力は運転モード別に異なるようです。関東地方は電源周波数が50Hzなので運転モードが「強」だと消費電力は46Wで中だと43W、弱だと37Wです。全体的に換気扇にしては消費電力が大きいので省電力のDCモーターではなく消費電力が大きいACモーターだと思います。

TVS-270Sの運転モード別の消費電力と月の電気代

運転モード消費電力(W)1ヶ月の消費電力(kW)月の電気代(1kWh=30円)
4633.12993.6円
4330.96928.8円
3726.64799.2円
TVS-270Sの月間消費電力と電気代

この電気代は換気扇が排気用に1つだけの第3種換気システムにしては非常に高い部類だと思います。これだけ消費電力が高いと一般的な第3種換気システムの「電気代が安い」というメリットが東プレのTVS-270Sでは消えてしまっています

県民共済住宅では2021年契約まではこのACモーターを使った第3種換気システムが採用されていましたが、2022年契約からは消費電力が少ないDCモーターを使った第3種換気システムが採用されています

右上の画像の様に標準の第3種換気システムは家の階数に関わらず1台設置されるとの事でした。

この機種はダクト式セントラルで各居室の天井に換気扇が着くので気密性が悪い家でもある程度安定した換気が出来ると思います。

オプションのダクト式セントラル全熱交換型第1種換気システム

ES-1200DCの特徴(MAXのWEBサイトから転載)
ES-1200DCの特徴(MAXのWEBサイトから転載)

県民共済住宅のオプションではダクト式セントラル全熱交換型第1種換気システムも選択出来ます。機種はMAXのES-1200DCという機種でMAXのWEBサイトに詳細なスペックや製品の特徴がちゃんと記載されています。

この設置イメージの図を良く見ると2階建ての家では1階天井裏に本体が1台と2階天井裏にも本体が1台設置されています。つまり各階に1台必要なので2階建ては2台必要になります。3階建てだと3台必要になるのか2台で良いのかは確認していないので不明です。

第1種換気システムのオプションは1台設置でも2台設置でもオプション代は税込99,000円で変わらないとの事でした。

ES-1200DCの仕様(MAXのWEBサイトから転載)
ES-1200DCの仕様(MAXのWEBサイトから転載)

仕様を見ると運転モードによって消費電力や騒音、熱交換効率が異なることがわかります。風量が大きいほど熱交換効率が低下して消費電力と騒音が高くなる傾向が見て取れます。

ES-1200DCの運転モード別の消費電力と月の電気代

運転モード消費電力(W)1ヶ月の消費電力(kW)月の電気代(1kWh=30円)オプション代の損益分岐点
(1台設置)
オプション代の損益分岐点
(2台設置)
強・標準63424.48734.4円31.8年回収不可
標準52719.44583.2円20.1年回収不可
標準42014.4432円14.7年63.7年
標準31611.52345.6円12.7年27.3年
標準2128.64259.2円11.2年17.3年
標準196.48194.4円10.3年13.6年
ES-1200DCの月間消費電力と電気代

運転モード別に「消費電力×24時間×30日=1ヶ月の消費電力」と「1ヶ月の消費電力×電気代30円=月の電気代」という計算式で月の電気代を計算してみました。この表の電気代はES-1200DCを1台設置した場合の消費電力と電気代です。2階建ては2台設置する必要があるので消費電力も単純に倍になります。

表の「オプション代の損益分岐点」は「第1種換気システムのオプション代(税込99,000円)÷(標準仕様の第3種換気システムの「強」モードで運転時の月の電気代993.6円−各運転モードの月の電気代×第1種換気システムの設置台数)÷12ヶ月」で99,000円の差額を換気システム単体の電気代の差額で何年で回収出来るかを計算しています。この計算では熱交換器で回収出来る分の冷暖房費は考慮していないので実際はもっと短期間で元が取れる可能性が高いです。

注意点として、この機種は1フロア1台設置の様なので2階建てだと2台設置されると思います。その場合オプション代は変わらなくても電気代が2階建てで上記の表の2倍になります。電気代だけでなくメンテナンスの手間やフィルター交換の費用も倍になるので平屋建てではない人は注意が必要です。

換気扇が給気用と排気用とで2つある第1種換気システムなのに消費電力が低いのは給気側、排気側両方ともDCモーターの換気扇を使用しているためだと思います。県民共済住宅の標準仕様の第3種換気システムが月1,000円程の電気代がかかりますが、オプションの第1種換気システムを導入すると風量にもよりますが1台につき月200〜750円位で収まるので、県民共済住宅で平屋建ての場合、標準仕様の第3種換気システムよりもオプションの第1種換気システムの方が換気システム単体の電気代が安くなるという逆転現象が起こっています。

更に熱交換器で排気時の熱を70〜80%回収するので冬の暖房費も第3種換気システムよりは確実に安くなります。恐らく年間で5千円〜1万円位は暖房費が安くなると思われます。夏は室内外の温度差がそれほど大きくないのでそれ程節約にはならないと思います。

第1種換気システムの場合、フィルターを数年に1度は交換する必要があるのでフィルター代が定期的にかかってきます。MAXの別売り部品の通販サイトのページを見る限りPM2.5対策用のフィルターだと1枚約1万円、通常のフィルターだと1枚千円位のコスト感です。

高気密ではない県民共済住宅ならではの注意点

県民共済住宅の場合、高気密住宅ではないので第1種換気がしっかり機能するかはわかりません。気密性が低い(家の隙間が多い)と換気システムの給気口、排気口以外の家の隙間からも空気が出入りしてしまいます。隙間から出入りする空気は熱交換器を通さない換気になってしまうのでせっかくの熱交換器の意味が無くなってしまいます

例えば換気システムから出入りする空気の量が50%、家の隙間から出入りする空気が50%で熱交換率80%の場合、換気システムから出入りする空気50%の内の80%分しか熱交換器を通りません。つまり40%分しか熱交換出来ない事になります。

そうなると冬の寒さ対策で全熱交換型の第1種換気システムをわざわざ入れたのに換気の多くが熱交換器を通らない換気になってしまい冬でも家が暖まりにくく、なおかつ暖房費もそんなに節約できないという事も現実的にあり得ます。

高気密でないと第1種換気でも第3種換気でも計画通りの換気にならないので換気に関しては特に家の気密性能が重要です。

以前は気密性能を確保しやすい吹付け断熱のオプションが存在したので第1種換気システムとの相性も良かったと思いますが、今は吹付け断熱のオプションが廃止され、断熱材は標準仕様でも高断熱仕様のオプションでも壁と天井は袋入りのグラスウールで気密性能は完全に現場の施工次第という事もあり、気密測定をそもそも行わない県民共済住宅では気密性能は残念ながらあまり期待できません。

最後に

一般的には第3種換気の方が第1種換気よりも電気代が安いと言われていますが、実際に県民共済住宅で採用する機種の消費電力から電気代を計算してみると第1種換気システムが1台のみの場合はその逆で、県民共済住宅では第1種換気システムの方が電気代が安いことが判明しました。こういう事は実際に計算してみないとわからないことがあるので計算してみて良かったです。また、2台設置する場合でも運転モードによっては第1種換気システムの方が電気代が安くなります。

一般的には第1種換気は導入コストが高く(プラス30〜40万円)、熱交換で節約出来る冷暖房費で元を取ろうとすると30年位かかって元が取れないという事が言われていますが、県民共済住宅の場合は導入コストがプラス10万円で更に換気システム自体の電気代が第1種換気の方が安いという事もあり、平屋の場合は熱交換で節約できる暖房費と換気システムの電気代の差額を考えると数年〜15年位で元が取れる可能性が高いです。ただ、換気システムが故障した場合の修理費は第1種換気システムの方が高くなると思うのでそういう事まで考えると一概に得とは言い切れません。

第1種換気は空気がキレイになって快適性も上がり光熱費も下がるという非常に大きなメリットがありますが、月1回程のフィルターの掃除が必要になったり、そのフィルターに虫がついている事があったりと人によっては耐え難いデメリットもあります。

これらのメリットデメリットを理解した上で、第1種換気のメリットが大きいと考えて、なおかつフィルターのメンテナンスを習慣化出来る人は第1種換気が良いと思います。

逆にフィルターのメンテナンスが面倒だったりオプション代が高いと思う人は月々の電気代が数百円高くなっても標準の第3種換気が良いと思います。第3種換気も給気口にフィルターがあるので完全なメンテナンスフリーにはなりませんがそれでもメンテナンスの頻度が低くても問題が起きないのでズボラな人というか普通の人は第3種換気が良いと思います。

私はメンテナンスが面倒なので標準の第3種換気システムを導入するつもりでいます。県民共済住宅では気密測定を行っておらず、平均的なC値(隙間相当面積)の値も公開していない事もありC値1以下の高気密住宅にはならないと思っているので換気システムを拘ってもあまり意味が無いのではないかという懸念が大きいです。

とりあえず第1種換気システムが1台で済む場合は換気システム自体の消費電力と熱交換器で回収できる熱の分の光熱費でそのうち元が取れる可能性が高いので快適性を求めるなら結構ありなオプションだと思います。