新築する際に有線LANの配線をどうしようか迷う人も多いかと思います。ネットワークの知識がない人にとっては結構決めるのが大変なのではないでしょうか。
また、近年はデスクトップPCが廃れてきて有線LANポートが無いノートPCばかりになってきているのでそもそも有線LANは要らないのではと考える人も多いかと思います。
県民共済住宅には有線LANのオプションもあるのでそのオプションについても調べてみました。
LANって何?
LANはLocal Area Networkの頭文字を取った物で「ラン」と読みます。ローカルエリア・ネットワークなのでインターネットの手前の家の中のネットワークの事を指します。
LANとインターネットとの違いは、LANは大雑把に言うと自宅のルーターのLANポートに繋がっている内側(家の中)のネットワークで、インターネットは自宅のルーターのWANポートに繋がっている先のネットワークの事を指します。機器同士を有線で繋いでいるなら有線LAN、無線で繋いでいるなら無線LAN(WIFI)という様な呼び方で分けられています。
この記事では室内の有線で繋がっている有線LANの事をテーマに扱っています。
WIFIの時代にそもそも有線LANって必要?
スマホもノートPCもWIFI(無線LAN)でネットワークに接続するのが当たり前になっていますが、そんな時代でも有線LANは必要でしょうか。
私の意見としては必須とまでは言えないですが家を建てた後だとLANケーブルの隠蔽配線が困難になるので空配管だけでもしておくことをオススメします。
最近はWIFIの速度や安定性がかなり向上しているので人によっては有線LANが無くても全く困らないと思います。特にオンラインゲームをしない家庭や家でPCを全く使わない家庭なら不要だと思います。
家を建ててから有線LANを配線する場合は壁内配線に出来ない
有線LANを新築時に用意した方が良い一番の理由はこれです。家を建てる時は別に有線LANなんて要らないかなと思っても家を建ててから有線LANが必要になった時に新築時に何も考えていないとLANの配線を壁の中に通す事が出来ません。その場合ドアの隙間にLANケーブルを通す形になってケーブルが邪魔になって後悔することになります。
LAN配線を引く気が無くても将来配線出来るように壁内に空配管(CD管やPF管)を通しておけば壁内配線に出来るので空配管だけはしておくことをオススメします。特に、各階に最低1箇所は空配管を通しておくと良いと思います。
空配管さえしておけばLANケーブル以外のケーブルもその空配管経由で室内に配線できるので時代の変化に対応しやすくなります。
有線LANは高速でレスポンスも早く安定している
有線LANが優れているのは実効速度の早さやレスポンスの早さです。動画を見るとか普通にインターネットをするとかだとあまりWIFIとの差は感じませんが、オンラインゲームをするとなると話が変わってきます。
PCやゲーム機でFPSの様な一瞬のラグがゲームプレイに大きく影響するようなオンラインゲームをするなら有線LANをテレビ裏やPCのある部屋に引いておきましょう。ゲーム目的なら有線LANは必須です。
インターネット回線を引き込んだ部屋以外にネットワーク機器やNASを設置したい場合
インターネット回線を接続しているルーターのある部屋に全てのネットワーク機器やNASを設置する予定なら有線LANの壁内配線は要らないかもしれませんが、WIFIアクセスポイントだけは家の中心近くに配置したいとかNASは別の部屋に置きたいみたいな要望があるなら有線LANを壁内配線しておいた方が良いでしょう。
後はデスクトップPCをメインで使うならPCを使う部屋にはLAN配線しておくと困らないと思います。
家が大きい場合、家の端から端までWIFIの電波が届かない可能性もあるのでWIFIアクセスポイント(WIFIルーター)を設置した部屋から一番遠い部屋にWIFIアクセスポイントを増設出来るように配線しておくと良いかもしれません。ただ、これは必須ではなく電波が届かない部屋があるならWIFIの中継機を使えば良い話でもあります。中継機を使うなら有線LANが無くても大丈夫です。
自宅を事務所として使いたい場合やリモートワークが多い場合
自宅を事務所として使う場合やリモートワークが多い場合は特にネットワーク環境をしっかり整えておくべきです。
リモートワークで職場のネットワークにVPN接続して職場にある自分のPCをリモートデスクトップ等で遠隔操作するような場合は安定して高速な有線LANの方が向いています。また、職場のネットワークにVPN接続してファイルをローカル側ではなく全て職場のファイルサーバーに保存する様な使い方なら高速な有線LANを用意した方が捗ると思います。
有線LANを配線しておいた方が良い所
リビングのTV付近
まずはリビングのTV付近です。TV周りはゲーム機を置くことが多いのでオンラインゲームをするなら有線LANがないとラグでストレスになると思うので有線LANを引いておくべき箇所です。また、TV本体やブルーレイレコーダーにLANポートがあるなら有線でネットワークに繋いだ方が通信が安定するのでオススメです。
TVとゲーム機、ブルーレイレコーダーそれぞれに有線LANで接続しようとすると壁のコンセントのLANポートが1つだと足りないですが、LANはスイッチングハブという機器を使えばコンセントの電源タップみたいな感じで分岐出来ます。スイッチングハブは3千円位で買えるのでわざわざコンセント側のLANポートを増やす必要はありません。
書斎やスタディースペース
PCで仕事をする可能性がある場所にも配線しておくのが良いでしょう。可能ならWIFIよりは有線LANでPCに繋いだ方が通信が安定します。古いPCでWi-Fi5(IEEE 802.11ac)未満のWIFIにしか接続できないなら有線LANがある方が捗ります。
子供部屋
スタディースペースの様な勉強する専用のスペースが無く、子供は子供部屋で勉強させたい場合は子供部屋に有線LANの配線をしておくと良いと思います。
もし将来的にリモートで学校や塾の授業を受ける機会が増えれば子供部屋のLANポートは役に立つ可能性がありますが、わざわざ有線LANを引く必要があるかと言われたらWIFIで良いような気もする微妙な所ではあります。
LANケーブルの規格について
LANケーブルの配線の規格がカテゴリー5(CAT5)やらカテゴリー5e(CAT5e)やらカテゴリー6(CAT6)やらカテゴリー6A(CAT6A)やらカテゴリー7(CAT7)やら沢山あってどれを選んだら良いかわからない、という人は多いのではないでしょうか。
これらのカテゴリー何とかはネットワークの規格です。超大雑把に言えば数値が大きい方がより新しい規格で、カテゴリーが同じ数字で後ろに「e」とか「A」のアルファベットがついている方がその規格の改良版みたいな位置付けになります。
規格 | 最大通信速度 | 端子 | コメント |
---|---|---|---|
カテゴリー5 | 100Mbps | RJ-45 | 完全に時代遅れの規格 |
カテゴリー5e | 1Gbps | RJ-45 | 現在主流 |
カテゴリー6 | 1Gbps | RJ-45 | 現在主流? |
カテゴリー6A | 10Gbps | RJ-45 | 今後主流になるはず |
カテゴリー7 | 10Gbps | ARJ45 / GG45 / TERA | 現状オススメしない |
最大通信速度が大きければ大きいほどLANの速度が早くなります。単位の1Gbpsは1000Mbpsと同じです。カテゴリー5から5eになると最大通信速度が10倍になり、カテゴリー6から6Aになるとまた最大通信速度が10倍になります。
カテゴリー5は時代遅れなので絶対に選んではいけない
2021年時点でカテゴリー5のLANケーブルは時代遅れなのでもう入手するのも難しいですが、カテゴリー5のLANケーブルは最大通信速度が100Mbpsで遅いので安いからといって絶対に手を出してはいけません。新築の家の壁内配線にカテゴリー5のケーブルを引いたなら絶対に後悔するレベルです。
カテゴリー5eなら現状問題なし
カテゴリー5e(エンハンスドカテゴリー5)は現在主流のLAN配線の規格です。最大1Gbpsの速度が出るので決して遅いわけではありません。現在のネットワーク機器やPCのLANポートは1Gbpsまでしか対応していない製品がほとんどなので現時点〜5年後位のLAN配線ならカテゴリー5eで十分と言えます。
有線LANをテレビ本体やブルーレイレコーダーやFire TV Stick等に繋いでYouTubeやNetflixやAmazonプライムビデオを見たいという様な用途ならカテゴリー5eで現状は全く問題ありません。テレビやブルーレイレコーダーのLANポートは1Gbpsどころかその10分の1の最高速度の100Mbpsの物が主流なのでネット動画をスムーズに見たいから有線LANを入れたいならカテゴリー5eでまず問題無いでしょう。
実際にソニーのフラッグシップモデルの4K有機ELテレビのブラビアA90Jシリーズでも有線LANポートは「LAN端子(100BASE-TX/10BASE-T)」とあります。安いモデルではなく2021年度のフラッグシップモデルですらカテゴリー5対応の100MbpsのLANポートしか付いていないので将来的にもカテゴリー5eの1Gbpsの配線があれば十分だと言えます。
2021年現在で普通の人が家庭内LANで1Gbps以上の速度が必要になるシチュエーションなんてほとんど無いので家庭内LANにロマンを求める人以外はこれで良いのではないかと思います。WIFIをメインに考えていて有線LANは使うかわからないけれどとりあえず配線だけしたいならカテゴリー5eで十分です。
将来的に遅くて使い物にならない可能性はありますが、その場合に備えてLANケーブル単体で配線してもらうのではなく、CD管の中にLANケーブルを通して貰って将来的にケーブルを簡単に交換出来るようにしておきましょう。
カテゴリー6はカテゴリー5eから追加費用を払ってまでアップグレードする必要はない
カテゴリー6はカテゴリー5eよりもノイズ耐性が強くなっているので長距離の配線でも通信品質が落ちにくくなっています。また、ネットワークの伝送周波数帯域が100Mhzから250Mhzに増えているので最大通信速度は変わらないものの一度により多くの通信が出来る様に進化しています。
ただ、普通の家ではネットワークの帯域をフルに使うことなんてまず無いのでカテゴリー5eからカテゴリー6へアップグレードしても体感は変わらないと思います。カテゴリー5eとの差額が数百円位なら気分的にカテゴリー6にアップグレードした方が良いですが数千円以上の負担がある場合は中途半端なカテゴリー6にするよりはもっとお金を出して10Gbpsのカテゴリー6Aにした方が良いと思います。
カテゴリー6Aは先行投資的な意味合いが強いが1Gbpsより速い光回線を契約するなら入れるべき
カテゴリー6Aは最大通信速度が10Gbpsになるので将来を見据えるとカテゴリー6Aにしておきたいです。2021年現在では10Gbpsに対応するネットワーク機器やPCが非常に少ないので先行投資的な意味合いが強いです。
注意点としてはLAN配線が1Gbpsから10Gbpsになったからと言って実際の体感速度が10倍高速になるわけではありません。10Gbpsの速度を引き出すには配線だけでなくスイッチングハブやルーターも10Gbps対応品が必要になる上、PCのLANポートも10Gbps対応品が必要で更にPC自体のスペックも高くないと速度向上を体感出来ないと思います。ルーターからPCまでのネットワーク経路上にある機器に1Gbps用の機器が1つでも混ざっているとそこがボトルネックになって1Gbpsの体感速度になります。
また、10GbpsのネットワークにNASやファイルサーバーを接続してもストレージがHDDならHDDへのアクセス速度がボトルネックになってきます。1Gbpsのネットワークと比べて恐らく体感的には2倍も差がないのではと思います。
そのような点から2021年時点では10Gbpsにするにはまだ時代が追いついていない感じがするので先行投資的な意味合いが強いです。2021年現在でスイッチングハブの10Gbps対応品は非常に高い上消費電力も大きいし家庭向けとは言えない代物しかありません。
ただ、インターネット回線を下り2Gbpsや10GbpsのNURO光やauひかりの5Gbpsか10Gbpsの様な1Gbpsを超える高速回線にする場合はカテゴリー6A未満のLANケーブルだとそこがボトルネックになるのでカテゴリー6Aの配線にすべきです。
カテゴリー7はあまりオススメしない
注意が必要なのがカテゴリー7です。現在市販されているカテゴリー7のLANケーブルの端子はカテゴリー6Aまでと同じRJ-45になっていますが、カテゴリー7の正式な規格ではこの端子は用意されていないのでRJ-45の端子がついているケーブルは全て規格外の物という事になります。住宅で例えるなら「耐震等級3相当」を謳っている様な感じです。
CD管やPF管だけ壁内に用意してもらって自分で配線を引く時にカテゴリー6Aよりもカテゴリー7のLANケーブルが大幅に安いならこれを選ぶのもありかもしれません。カテゴリー7よりもカテゴリー6Aの方が安いなら素直にカテゴリー6AのLANケーブルを買いましょう。
大切なことは壁内に空配管を用意して将来的にLAN配線を容易にやり直せる事
2021年時点のLAN配線の理想はカテゴリー6Aですが、カテゴリー6Aが主流になる頃にはもっと速い有線LANの規格が出てくる可能性や将来的に光ケーブルでLANを組む時代になるかもしれないのでカテゴリー6Aにするかカテゴリー5eにするかというよりも、壁内に空配管(CD管)を各部屋に通して貰ってLANの壁内配線を容易にやり直せるようにしておくのが一番大切です。
LANの配線は空配管さえ通っていればその中にLANケーブルを通して両側のコンセントにアダプターを着けるだけなのでDIYでもそこまで難しくはないです。その際通線ワイヤーは別途購入した方が通線作業が楽になります。
県民共済住宅の場合はCD管は1本6,000円位で用意出来るのでLAN配線のオプションを導入するよりも安価に済みます。
【追記】「DIYでCAT6Aの壁内LAN配線を行いました」という記事で実際に家が引き渡しされた後にDIYでLAN配線を行いました。
県民共済住宅でLAN配線のオプションを頼んだ場合
県民共済住宅ではオプションで因幡電機産業の光IDコンセントパック情報配線システムの設定があります。これは光ID基地局コンセント(1箇所)とLANポートが付いている情報コンセント2台がセットになっていて、光ID基地局コンセントと2台の情報コンセント間が標準だとカテゴリー5eのLANケーブルで配線されるという商品です。
オプション価格は光ID基地局コンセント1台と情報コンセント2台で37,400円、光ID基地局コンセント1台と情報コンセント3台で49,500円と結構高いです。未確認ですが料金にはLANケーブル代と施工費も含まれていると思います。
オプションファイルを見る限り情報分電盤みたいなスイッチングハブ内蔵の機器ではなく単にコンセント間の壁内配線がされているシンプルな物ですね。
上の画像は因幡電機産業のこのオプションに対応するケーブルのWEBサイトから転載しました。このオプションを選ぶとカテゴリー5eのLANケーブル単体を情報コンセント2台に配線出来る様ですね。ケーブルのラインナップにはカテゴリー6AのLANケーブルやTVの同軸ケーブル(S-5C-FB)と電話用のケーブルとLANケーブルがまとめて配線出来る複合ケーブルもあるようです。
個人的に気になるのがこの配線だとCD管を通さないので将来的に配線をやりかえるのが非常に困難になるのではと懸念しています。LANケーブルの外側に小さいチューブが巻かれているのでLANケーブルの入れ替え自体は不可能ではないかもしれませんが、チューブが細いので途中でケーブルが突っかかったりと入れ替えに相当苦労すると思います。
このオプションを採用した場合に空配管を通してくれるのかがわかりませんが、上の画像の様な空配管なしの直接配線の場合は配線の入れ替えが困難になるので追加費用(金額は聞いていないのでわかりません)を払って最初からCat6AのLANケーブルを入れてしまった方が後々困らなそうです。複合ケーブルを入れた場合のTVの同軸ケーブルは4K8K対応なので当分入れ替える必要は無さそうです。
私ならどうするか
私は今住んでいる家でも有線LANと無線LANを使って家庭内ネットワークを組んで便利に活用しているので県民共済住宅で新築する家でもがっつり有線LANを使う予定です。
今住んでいる家では部屋間のCD管が電話線のモジュラージャック用しか無くて家庭内LANを構築する際に壁内配線に出来ずに壁沿いにきしめん状の薄型LANケーブルを這わせてモールで覆う位しか出来なかった苦い経験があるので絶対に空配管だけは各部屋に通しておきます。
県民共済住宅オプションの光IDコンセントパック情報配線システムは将来的にLANケーブルを置き換えるのが非常に困難になりそうなのでこのオプションは入れないつもりです。何となくですが価格面でも割高感があります。
県民共済住宅で各部屋に個別にLAN配線をする際の価格はわかりませんがカテゴリー6Aの配線が高ければ空配管だけお願いして引き渡し後にDIYでカテゴリー6AのLANケーブルを配線するつもりです。とりあえず配線だけは10Gbpsに対応させておいてスイッチングハブ等は価格が安くて消費電力が少ない1Gbps対応品を使って時代が10Gbpsに追いついてきた頃に10Gbps対応品に置き換えていく感じで考えています。
【追記】「DIYでCAT6Aの壁内LAN配線を行いました」という記事で実際に家が引き渡しされた後にDIYでLAN配線を行いました。